坂や階段を歩くときには、上りより下りのほうが糖を効率よく消費し、筋肉を鍛える効果も発揮する

ブレーキをかける筋肉は糖をエネルギー源にするため消費する

たとえば、1階から4階へ行きたいとき。2~3階ならまだしも、階段を歩いて上るのは、たいへんと思う人が多いのではないでしょうか。

では、これが逆だったらどうでしょう。4階から1階へ、階投を歩いておりるというのならば、楽にできる気がしませんか?しかし、「せっかく歩いても、下りなんて大した運動にならない」と、多くの人は考えているのではないでしょうか?

ところが、血糖値を下げるためには、下りの運動のほうが、効果的だという研究が、オーストリアで行われたのです。この研究は、運動不足ぎみの45人を2 つのグループに分け、標高約500mの山腹で、それぞれ上り・下りのみの運動を4カ月間、定期的に行ってもらうというもの。

その結果、下りグループは、血中の糖を体内組織にとり込む能力が、8.2% も改善されていたということがわかったのです。じつは、この実験を行った研究グループ自身、このような結果が出たのは予想外のこと。当然、エネルギー消費のより多い、上りのほうがよい結果が出るものと予想されていました。

では、なぜ、このようなことが起こったのでしょうか。筋肉には、糖と脂肪をエネルギー源とする、持久力の高い「遅筋線維」や、糖を主なエネルギー源とする、瞬発力にすぐれた「速筋線維」といった筋線嫌があります。

日常生活のなかでは、まず、スタミナのある遅筋線練から使われるのが一般的。しかし、動いているのをやめる(減速する) という運動においては、その優先順位が崩れ、速筋線錐から使われるようになるのです。

坂や階段を歩く場合、上りで使われるのは、通常と同じように、遅筋線練から。それに対して、下りでは、転がり落ちないよう、ブレーキをかけつづけている状態になるため、速筋線嫌が使われています。つまり、糖を主なエネルギー源とする速筋線嫌が使われる下り運動は、それだけ効率よく、血中の糖を消費することができるというわけです。

無意識に筋繊維を鍛えることができる

さらに、長期間、継続して下り運動を行ったことで、速筋繊維が鍛えられたということも考えられます。下り運動では、絶えずブレーキをかけ、速筋線維を使っていることになるので、線維を強くしやすいのです。

また、一般に、上りより下りは、筋肉が損傷しやすく、筋肉痛などもよく起こります。じつは、このような多少の筋肉痛が起こる程度の損傷は、より筋繊維の再生力を上げることにつながるのです。こうして、速筋線嫌が鍛えられ、筋肉量が増加すれば、その分、糖をとり込む能力も上昇。ふだんから、糖代謝が上がると考えられます。

いつもは使っていたエレベーターやエスカレーターを下りのときだけでも使わないようにする、2~3階分なら階段を使うなど、少ずつでも、下り歩きを毎日の生活のなかにとり入れてはいかがでしょうか。歩くスピードは、効果に大きな影響はないので、ゆっくりでもかまいません。無理のない範囲で、継続して行うようにするとよいでしょう。