なるべくいつも通りに接する

うつ病の患者さんだからといって腫れ物にさわるような特別扱いはしないほうがいいのです。いつも通りの自然な態度であたたかく見守りましょう

家族や友人、会社の同僚など、身近な人がうつ病になつたり、うつ状態が気になつているようなときに、周囲の人はどのようにつきあっていけばいいのでしょうか。家族や会社の上司などからこのような相談を受けたとき、私は次の5点に整理して話しています。

  1. 必要以上に気をつかいすぎない(いつも通りに)
  2. 誤解を解く(気のせいではない)
  3. 患者さんのペースをたいせつに(はげまさない)
  4. 問題点を明確に(問題解決の方向で話し合う)
  5. 薬をじょうずに利用するように助言する

「うつ病ははげましてはいけない」ということがアドバイスとしてよくいわれます。その通りなのですが、私は同じくらいに、「いつも通りに接する」ということがたいせつだと考えています。

相手が精神的な問題を抱えているからといって、あまり神経質になることはありません。心カカ配しすぎずに、なるべく自然に、自由な気持ちで接してあげてください。

そのほうが、いろいろなことともよく見えてきます。うつ病の人は、閉じこもりぎみになったり、行動が鈍くなったり、考え方が狭くなったりしますが、まわりが見えていないわけではありません。

ある意味で、まわりの人たちの言動や気持ちに、ふだん以上に敏感になっているともいえますから、あまり神経質な態度をとられると、「自分はそんなにたいへんな病気なんだろうか」「また迷惑をかけてしまつた」などと不安やうつ的な気分を強めてしまうこともあります。

そういう意味でも、とくに家族は、できるだけいつも通りにふれあっていってほしいと思います。気になることがあれば、変に遠慮せずに話したほうがいいと思います。

困ったことがあれば、そのつど話し合いながら、解決方法を考えていきます。もちろん、注意点やポイントのようなものもいくつかあります。なかでも主要なことはこれから順番に説明していきます。ただ、いちばんだかまいじなのは、なるべくゆったりと構えて、目をそらさずに、自然な気持ちで本人と向き合っていくことだと私は思います。

治療の足を引っ張らない

うつ病治療中の患者さんを周囲で見守る人たちに、私がぜひいいたいことのひとつは、「治療の足を引っ張るようなことはしないでください」ということです。

これはとくに薬についてです。うつ病治療中の患者さんに、「そんな薬を飲むな」とか、ちょっと症状がよくなると「いつまでも薬に頼ってちゃだめだ」などという人がとても多いのです。

現在の抗うつ薬は、依存や中毒という面での問題もほぼありません。現在、いちばんつらいのは患者さんです。医師は、そのつらい症状をやわらげようとして、患者さんの現状や副作用のことも考えながら、薬を処方しています。もしも、本人に薬についての迷いが感じられるのならば、「やめろ」ではなく、「もう一度医師と相談してみては」といってあげてほしいと思います。

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