受診をいやがる場合

本人が受診を納得しないときには、けっして無理をしないでください。うつ病の治療では本人の「よくなろう」という前向きな姿勢が欠かせません。

いくら受診をすすめるタイミングが最適であっても本人が受診を敬遠するケースも多々あります。仕事や生活上の問題や、心身の気になる症状から、精神科への受診をなっとくすすめても、本人がスムーズに納得するとは限りません。

医師は、精神面でなにか気になることがあるときには、小さなことでも、なるべく早めに、気軽に受診してほしいといつも思っています。けれども、多くのみなさんにとって、精神科も心療内科も、まだまだなじみが薄いところだろうということも知っています。

ですから、「とにかく病院に行きなさい」と頭ごなしにいったり、むりにすすめたりするのはよくありません。とくに、うそをついたりだましたりして精神科につれていくようなことは、絶対にしないでください

上司が部下を「食事に行こう」といったり、「自分の診療に付き添ってほしい」といっていっしょに病院に来て、実は子どもの精神状態が心配だと話し始めたり、というようなケースがときどきあります。

私も何度か経験がありますが、たいていの場合は、本人がすごく怒ってしまい、医師としても、「ご本人とよく相談して、またいらしてください」というしかなくなってしまいます。

精神科の診療では、精神科医が一方的に患者さんの精神的な問題をとり出して、解決するようなことはできません。患者さんが、自分の気持ちを率直に話してくれなければ、医師もなにもわかりません。

患者さん本人が、受診して治療に取り組むことを納得して、医師の力を借りてみよう、自分の精神面にいまなにが起こつているのかを理解していこう、解決していこうという姿勢を持つことがとてもたいせつなのです。

本人がなかなか納得しなかったり、拒否的な態度が強いようなときには、周囲の人がまず専門医を訪ねてみるという方法もあります。家族が精神科医に相談をする、上司が産業医のところに相談に行く、というやり方です。

医師としては、本人を診察しなければ具体的な状況はわかりませんから、病状を説明したり、薬を出したりすることはできませんが、大筋としての考え方を話したり、とりあえずどんな対処策が考えられるかなどについて相談したりすることはできます。ただし、本人が受診しない段階で家族が相談すると医療保険が使えないことがあります。