医師には何でも相談する

医師には何でも話して、何でも質問しましょう。うつ病の治療では患者と医師が力を合わせてすすめていくことがとても重要です。

うつ病の治療を進めていくうえでは、医師とじょうずにつきあっていくこともたいせつです。いいかえれば、患者さんと医師との間によい関係をつくつていくということです。

そのためには、あなたがいま困ってそっちょくいることを、医師になるべく率直に話してください。そして、医師の説明がわからないときは、遠慮なくなんでも聞いてください。どうしても話しにくいという内容もあるでしょう。そういうことまで最初からむりに話そうとする必要はありません。けれども、「話してみよう?。でもちょっといいにくいな」と迷うくらいのことだったら、思い切って話してみてください。それだけ治療の手がかりが増えていくことになります。「こんなことをいうのは失礼ではないか」「いやな患者だと思われるんじゃないか」と医師に遠慮する人がいます。

医師も人間ですから、そのときどきで感情の動きはたしかにあります。けれども、精神的な問題の専門家として取り組んでいるのですから、一方的に怒り出したり、治療をやめてしまうようなことはありません。

「こんな薬、効くんだろうか」「こんなことをやっていてよくなるんだろうか」「先生は自分の考えを押しつけているだけじゃないか」などと、治療や医師に対する不満が浮かぶこともあるでしょう。そういうときも、できるだけ素直に自分の気持ちを表現してみてください。

これまでの医師の説明で不十分なところがあったのかもしれませんし、医師とよく話し合うことによって、不満も消えて気持ちもやわらぐかもしれません。

患者さんのなかには、精神科医は人の心が読みとれるといったイメージを持つ人もいるようですが、患者さんが話さないことは、医師も知るカカことはできません。

患者さんはいま自分が抱えている精神的な問題についての情報をできるだけありのままに提供し、医師は専門的な知識や技術を用意して、いっしょに力を合わせて、ともに解決策を探していくのが、うつ病の治療です。そういう意味で、うつ病の治療では、患者さんと医師は文字通り共同作業のパートナーのようなものだと私は思っています。これから具体的に説明していく精神療法では、とくにこのことが重要になってきます。

言葉も医療

医療というと、患者さんに薬を出したり、けがの処置や手術などの外科的な治療というイメージがまず頭に浮かぶと思いますが、精神的な問題に対しては、ことばも医療のたいせつな道具です。

薬物療法でうつ病などの症状が改善するのと同じように、ある種の精神療法(心理療法) を受けた患者さんは、受けなかった患者さんよりも明らかに高い率で症状が改善します。

また、精神疾患以外の病気でも、心筋梗塞、脳梗塞などになった人には、不安やうつ状態など精神面のトラブルがよく見られ、心理的なサポートが治療のうえでたいせつな意味を持ちます。これからの医療では、さまざまな心理的なアプローチを、より幅広い場面で患者さんに役立てていけるようになっていってほしいと思います。

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