環境面について

行き詰まってしまったときにその人を取り巻く環境を変えることはできないかという視点も精神的な健康にとってとても大切な考え方のひとつです。

薬物療法、精神療法と並んで、うつ病の治療では、その人の置かれている環境面への働きかけが有効になることもあります。これを環境調整(社会的治療) といいます。

環境といっても、客観的に「よい環境」や「わるい環境」があるのではなく、人間と環境の相互作用のなかで、その人にとってどんな環境がストレスになるかが変わってきます。

認知療法の考案者であるア一口ン・ペックが考えた性格類型のひとつに、自立・達成タイプと人間関係タイプという分類があります。

「自立・達成タイプ」の人は、仕事でもプライベートでも、なにかを達成することに喜びを感じ、どんどん新しいことに挑戟し、そのためにはまさつ周囲との摩擦もおそれません。「人間関係タイプ」の人は、周囲との協調をだいじにし、自分の成し遂げたことよりも、人間関係を重視します。

自立・達成タイプの人は、人間関係のトラブルには比較的強いのですが、自分が情熱をそそいだことがうまくいかないと、まわりが驚くほどのストレスを感じることがあります。

人間関係タイプの人は、仕事が多少うまくいかなくてもそれほどマイナスの気分にはなりませんが、自分の意見が仲間に受け入れられなかったり、まわりが自分の悪口をいっているように感じたりすると、それが強いストレスになります。

環境調整では、このような本人と環境との「相性」も考えながら、環境面への働きかけを考えていきます。企業で働く人の気分いどうの落ち込みなどに対しては、仕事の再配分や職場の異動が、予想以上に有効に働くことが少なくありません。

また、家族関係に大きな問題がある場合に、家族環境への働きかけを考えたほうがよいケースもあります。

たとえば、夫婦のどちらか一方が相手に対する不満をためこんで、精神的に非常につらい状態になっているような場合、問題となている点を洗い出すとともに、今後の夫婦関係のあり方もある程度見通しながら相談していくことも必要になります。

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