職場の異動と実施時の注意点

職場の異動などによって、精神的な問題が大きく改善することがあります。そのためには、周囲の人たちからのいくつかの配慮が大切になります。

職場面の環境調整として、具体的には、仕事の内容の見直し、仕事の分量や配分の見直し、職場の異動などが考えられます。

とくに職場異動は、仕事がらみのうつへの有効な解決策のひとつです。直接の上司にあたる人は、どのような方法をとる場合にも、本人のプライバシーヘの十分な配慮が必要です。患者さんの同僚や、自らの上司しゆしなどに相談するときにも、本人にあらかじめ趣旨を説明したり、了解得るなどしながら、慎重に進めることがたいせつです。

本人は自分のうつ状態について、上司を信頼して相談しているのですから、その気持ちを傷つけないようによく考えてほしいと思います。仕事の再配分や異動などを実施する場合には、周囲にもある程度情報を伝えておく必要が出てきます。

たとえば、うつ状態のために負担になっている仕事の量や内容を変更するときに、同僚にその理由が伝わっていないと、人間関係の摩擦が出てくる可能性がありますから、どのような内容を、どのくらいの範囲の人に伝えるか、本人とよく相談しながら決めていく必要があります。

もうひとつ、本人にも、職場の環境調整にかかわる当事者にも知っておいてほしいのは、そのような職場面の対策を実施しても、すぐに本人の状態がよくなるわけではないということです。

精神的な問題の改善には、それなりに時間がかかるのがふつうです。職場異動などのケースでなは、新しい職場に慣れる時間も必要です。実際、新しい職場で、本人が「これで元気になれる」と最初からがんばりすぎたり、新しい上司が「職場を変えたのだからもうだいじょうぶだろう」とどんどん仕事を与えてしまい、状態をわるくしてしまったというケースもみられます。

また、部下からそのような精神的な問題で相談を受けた上司も、異動ふ先の職場で迎え入れる側の上司も、これまで説明したような注意点を踏まえたうえで、日常的にはなるべくふだんどおり、自然に接してほしいと思います。

はれ物にさわるような態度は、うつの人によくみられる、うふさぎこみや閉じこもりを助長するおそれがあります。はげましすぎたり、がんばらせすぎたりしないように配慮しながら、本人とともに、ひとつひとつ問題解決にあたっていく姿勢がたいせつです。