精神療法と環境調整

うつ病の治療には、抗うつ薬を飲むことのほかに精神療法と環境調整という方法があります。生物、心理、社会という3つの側面からのアプローチが必要です。

抗うつ薬などによる薬物療法(生物学的治療) は、薬の作用によって私たちの脳神経の働きを調整して、うつ病のつらい症状をやわらげようとする治療でした。

うつ病の治療には、このほかに精神療法と環境調整という方法があります。精神療法(心理的治療) は、話し合いを通して気持ちの整理を進めるかんじゃ治療方法です。医師と患者さんで話をすることもありますし、心理の専門家がカウンセリングにあたることもあります。その基本的な考え方は、私たちが持っているものの見方、考え方のクセや傾向のようなもの、行動や人間関係のパターンを整理し、見つめ直して、精神的な苦痛を軽減させることに役立てていこうというものです。考え方のクセに対するアプローチとしては「認知療法」と呼ばれる治療法があります。

行動については「行動療法」、人間関係については「対人関係療法」という方法がとられます。精神療法と呼ばれるものには、このほかにもたくさんの考え方や技法がありますが、世界的に効果が認められているのは、認知療法、行動療法、対人関係療法だといわれています。

環境調整(社会的治療) は、個人を取り巻く環境に着目する治療法です。たとえば、本人は努力しているのにうまく職場になじめなくてストいどうレスがたまっているようなときに、仕事の配分を変えたり、職場の異動などによって精神的なトラブルを改善できることがあります。

家族関係にいちじるしいゆがみや問題があるときには、それを修正できないかという視点が必要になつてなってくることもあります。

このように、その人が置かれている環境に着日し、働きかけて条件を変えていくことによって、その人の精神的な問題を好ましい方向に転換させられないかと考えていくのが環境調整です。

私たち人間は、生物としてのメカニズムを持っていますし、精神・心理的な存在でもあります。そして、社会やさまざまな環境のなかで生きています。このような、生物、心理、社会という面をトータルに見ていきながら、症状を改善し、らくになれる方法を探っていこうというのが、うつ病治療の基本的な考え方です。

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