「気分の変化」は環境への適応

人間はいつも環境の変化に適応しながら生きています。うつ状態も躁状態もそのような適応の手段のひとつと見ることができます。

うつ状態 も躁状態 も、常に人間にとってマイナスな意味があるわけではありません。これらの気分の変化には、環境が大きく変わったり、強いストレスを受けたときの、適応的な反応という意味があります。

たとえば私たちは、大きなショックを受けたときに、すぐに次の決断や行動に向かわずに、ちょっと立ち止まって考え直したり、態勢を立て直したほうがいいときがあるということを知っています。

うつ状態というのは、そういう一時的避難のような気分と考えられます。仕事で失敗をしてしまったときに、取り戻そうとすぐに走り回るよりも、「運がわるかった」「なんでこんなことに」などとぼやきながら、どこふかでその失敗を振り返り、これから気を配るべきことを考えていたりします。

大きな失恋のあとで落ち込んでしまうのも、2人の過去を思い出したり後悔したりしながら、心の整理をつけて、また新しい人間関係をつくつていくための準備期間とみることができます。

けれどもそれが行きすぎると、また現実の世界に戻っていくのがこわくなって、自分にこもり続け、エネルギーをためようとしたはずなのにかえって元気をなくして、うつ病と呼ばれる状態に入っていきます。

躁状態のほうは、きびしい状況に立ち向かうために、エネルギーを集中して、一気に困難を突破しょうとしている状態といえます。こういうときには、精神的なエネルギーが高まって、気持ちが大きくなり、なんでもできるような気がします。

休まなくても平気で、まわりをどんどん引っ張って、新しいことにも次々挑戦したくなります。しかし、バランスがとれているうちはいいのですが、勢いが強すぎるたと、ケンカやトラブルが絶えなくなったり、明らかにむりな挑戦をしたりして、本人もつらくなり、まわりもとても困ることが増えてきます。精神的な問題の場合、どこまでが「正常」でどこからが「病気」という明確な境目があるわけではありません。うつ的な気分でも躁状態でも、そのために本人がつらくなっていたり、仕事や生活に実際に不都合が出ているようなときには、自分たちだけでなんとかしようとせずに、精神科医や心療内科医などの専門家に相談してみることがたいせつです。