大きな判断をしない

うつ病にかかっているときは、「大きな判断をする」ことは避けてください。あせらずに、目の前のことをひとつひとつ改善していくくとが大事です。

うつ病の治療中、またはうつ状態が気になっているときの大切な原則として、「大きな判断」や「重要な決断」はしないほうがいいといことがらうのがあります。

なにが重要で大きな事柄かは人それぞれですが、一般的によくあることでいえば、生活面では引っ越しや離婚、仕事面では退職や転職などがあるでしょう。

というのは、つらく苦しい体験ですから、多くの患者さんは、早くになんとかしたい、抜け出したいという気持ちを強く抱きます。人によっては、「大きな勝負」に出て、ケリをつけてしまおうという考えにとらわれてしまうことがあるようです。

たとえば、夫婦間でいくつか問題よちが出ているけれどまだ話し合いの余地も十分あるのに「すっぱり別れてやり直そう」と思ったり、職場のストレスから「いっそ辞めてしまって新しい自分になろう」と思い込んでしまう、というようなケースです。

そういうときには私は、それは一種の「あせり」であって、そのあせり自体がうつのひとつの症状なんだということを、なるべくていねいに話すようにしています。

このような状況で、自分の環境をがらりと変えてしまうような大きな判断や決断をして、実行しても、なかなかよい結果には結びつかないものです。

たとえば、騒音がひどいし、隣近所も口うるさい人ばかりで人た間関係のトラブルも絶えないということで、思い切って引っ越しせっかいたはずなのに、「うるさいなりにいいところだった」「お節介だけどいい人たちだった」と、古い環境に置いてきたものばかりに日が向いてしまい、新しい環境になかなかなじんでいけないということもよくみられます。

うつ病治療の大きな原則に「あせらない」ということがあります。けっしてあせらずに、ひとつずつ問題解決や症状の改善に取り組んでいくということですが、これは患者さんにとっても、私たち治療にあたる医師にとってもたいせつな原則です。

「あせってはいけない。だから、大きな判断もいまはひかえておこう」というふうに理解しましょう。