高齢者のうつ病

高齢者のうつ病では、抑うつ症状よりも興味の喪失や焦燥感、身障症状が目立つことに注意が必要です。痴呆と間違われることも少なくありません。

人によって程度の差はあっても、歳をとればたいてい、社会的な役割が小さくなったり、体力や気力が落ちて外に出る機会が減ったり、人とあまり会わなくなったりします。

そういう変化をきっかけに、高齢者が抑うつ感を強めていくことがあります。典型的なのは、定年退職をした人が、退職後しばらくたった時期にうつ病を発症するケースです。忙しい日々から解放されて、ほっとする気持ちと虚脱感が入りまじり、時間がたつにつれて、自分はもう必要とされていないという思いも出てきます。

そんなときに、「妻と二人で、これまで忙しくてできなかった旅行にたくさん出かけよう」というように、新たにやることが見つかればよいのですが、逆になにもする気が起きなくなってしまう人もいます。

高齢者のうつ病では、抑うつ感よりも、なにもやりたくない、やっても楽しくないという「興味の喪失」や、いても立ってもいられないようなな「強い焦燥感」がよくみられます。

これまですぐできたことを先に延ばしてしまったり人まかせにしてしまう、なんとなく充実感がない、というようなこともあります。

痛みや体のだるさ、疲れやすい、寝つけない、早くさ目が覚める、食欲が落ちる、やせる、などといった身体面の症状も目立カ、それらに隠れてうつ症状が気づかれにくいという問題も出てきます。また、もの忘れがひどくなったり、日時や場所がわからなくなったりちして、痴呆とまちがわれることもありますが、真性の痴呆と違い、抗うつ薬による治療などでうつ痛が改善すればもの忘れもよくなります。

真性の痴呆では、自分のもの忘れを気にしませんが、うつによるもの忘れでは、自分の記憶がわるくなったことをくよくよと悩みます。

高齢者にうつ症状がみられても、本人にも周囲にも「もう歳なんだから」と軽視されてしまうことがあります。けれども、高齢者がうつ病になると、身体機能にもよくない影響が現れ、いろいろな病気にかかりやすくなります。

もともと心臓病や糖尿病などの病気があれば、その症状を悪化させたり、治りにくくなったりもします。また、自殺のおそれが高まります。

高齢者にうつ状態がみられたときには、状況に応じて適切なアプローチを見つけ、積極的に診断と治療にあたるという考え方が必要です。