活性酸素が洪水のように押し寄せる場合

心筋梗塞の発作が起きる原因

体内で活性酸素が多量に発生する場面として、好中球などによる炎症きのほかにもう1つ、「虚血-再灌流」をあげることができます。

「虚血」とは、血流がとだえ、組織に血液が不足した状態のことで、「再灌流」は、とだえていた血流が再開することをさします。

心筋梗塞や脳梗塞などは、血管が詰まって組織が虚血に陥る点で共通しているので「虚血性疾患」と呼ばれます。この病名は耳慣れないかもしれませんが、日本人の死因で最も多いのが、実は虚血性疾患です。

「虚血-再灌流」に伴う活性酸素の障害作用に早くから注目したのは、その虚血性疾患を治療する臨床医たちでした。

心筋梗塞では、心臓自体を養っている冠動脈に血栓(血液成分のかたえしまり) などが詰まり、心筋に壊死(部分的な死) が起こり、心臓のポンプ機能が停止します。その温床となるのは、動脈硬化です。

冠動脈の内腔が狭くなり、正常な状態の25%程度しか血液が流れない血管の枝ができると、一過性の胸痛を導徽とする狭心症の発作が起こります。

冠動脈の狭窄がさらに進み、完全に閉塞してしまうと、心筋梗塞の発作となるわけです。そこで、狭心症や心筋梗塞の患者さんには、PTCA (経皮的冠動脈形成術) などの治療が施されてきました。

PTCAは、狭くなった冠動脈内にバルーン(風船) つきのカテーテルを挿入し、バルーンをふくらませて、狭くなった部分を押し広げる治療法です。

心筋の壊死は虚血によって起こるのですから、血流を再開して酸素の供給を元に戻してやれば、心筋を壊死から救えると臨床医のだれもが思いました。

ところが、実際には、PTCAを施した心筋梗塞の患者さんの中に梗塞巣が広がり、不整脈が出るなどかえって重症化するケースが出てきたのです。

血流の再開した心臓に洪水のようにあふれる活性酸素

その原因を調べてみると、血流の再開に伴って活性酸素がまるで洪水のように心筋を襲い、ダメージを与えていることがわかりました。こうしたことがきっかけで、心筋梗塞の発作そのものも、虚血によって単に酸素の供給がとだえただけでなく、「虚血-再灌流」の結果、発生した多量の活性酸素が冠動脈内に血栓を形成し、冠動脈のスパスムなどを招いて起こることが明らかになったのです。

「虚血-再灌流」に伴う活性酸素の障害作用を防ぐため、現在では、狭心症や心筋梗塞の患者さんに活性酸素を消去する作用のあるビタミンEやユビキノン が投与されています。

臓器移植についてですが、ドナーから摘出した臓器は血液が循環しないため、棲端な虚血状態におかれます。その臓器を患者さんに移植すると、血液の再港流に伴い、発生した多量の活性酸素によって、せっかく移植した臓器が傷めつけられてしまいます。このような障害を防ぐため、移植する臓器にあらかじめ抗酸化剤を注入して、活性酸素の発生を抑える方法がとられています。