活性酸素の強力な作用

1gの酸素で10gの鉄はポロポロになる

体内に細菌などが侵入すると、白血球の中で最も数が多く、70%近くを占める「好中球」という細胞が真っ先に駆けつけ、細菌をまる飲みにします。

同じ白血球の仲間で「マクロファージ」と呼ばれる大きな細胞も細菌などの異物の捕食に働き、好中球の10倍以上の食作用を発揮することから「大食細胞」のニックネームがついています。

これらの白血球は活性酸素の強力な酸化作用を利用して、食べた細菌を殺し、異物を分解するのです。自転車などのサビ、りんごの切り口の変色、サラダ油やコーヒー豆、ワインなどの変敗などなど。

身近なところをさがしただけでも、酸素がその酸化作用によって悪さをする例は、あげればきりがありません。1リットル(牛乳1パック分) の酸素は10gの鉄をサビでボロボロにしてしまうほどの酸化作用を秘めていますが、活性酸素は、その酸化作用が何倍も強力になった酸素で、スーパーオキシド、過酸化水素、ヒドロキシルラジカル、一重項酸素の4種類が知られています。好中球やマクロファージがまず放出するのはスーパーオキシドです。

スーパーオキシドは酸素に原子が余計に1個ついたもので、これが反応をへて過酸化水素を生じ、殺菌作用を発揮します。過酸化水素はさらに活性酸素の中でも酸化作用の最も強力なヒドロキ、ツルラジカルの発生源となります。

このような活性酸素の稔攻撃にあった細菌はひとたまりもなく殺されます。その意味で活性酸素は確かに私たちの生存に役立っているのですが、やっかいなことに、好中球やマクロファージは細菌などのいない場所でも多量の活性酸素を放出することが少なくないのです。

野球選手ピッチャーの肩の炎症も活性酸素

たとえば転んで体のどこかを打撲すると、患部は炎症を起こし、はれて熟を持ちます。野球のピッチャーなども、力投したあとに肩やひじを冷やしているのをテレビ中継で見かけますが、こうした急性の炎症も好中球などの放出する活性酸素によって引き起こされるのです。

好中球は、ふだんは血液やリンパ液の流れに乗って全身をパトロールしたり、リンパ節に集合したりしていますが、細菌に感染して粘膜の細胞がやられると、壊れた細胞から好中球に非常事態を知らせ、患部へ呼び集める物質が放出されます。

この物質はサイトカインと呼ばれますが、打撲などで細胞がつぶれたときにも、このサイトカインが出て好中球を不必要に呼び集め、炎症を招いてしまうわけです。

胃炎から歯肉炎まで「炎」の字がつく多くの病気には、好中球などの放出する活性酸素が深くかかわっています 。好中球やマクロファージなどはこうした炎症を引き起こす細胞という意味で「炎症細胞」とも呼ばれています。

炎症とは、私たちの体に備わった剣が細菌などの病原体を殺し、その返す刀で自分の体を切りつけてしまったよ、義気といえます。