女性が男性より長生きなのは

体の老化や寿命にも深くかかわる活性酵素

古代中国を統一し、万里の長城を築いた秦の始皇帝が不老不死の霊薬を探し求めたのは有名な話です。始皇帝は霊薬を手に入れることなく死にましたが、現代医学が老化のメカニズムに解明のメスを入れた結果、老化の速度をゆるめる効果を抗酸化ビタミンに期待できることが胡らかになってきました。

普通は、体が老化し、やがて寿命を迎えるのは生物の宿命のようなものだと考えます。現代医学にも、生物の遺伝子にはあらかじめ老化の過程や寿命がプログラムされているとい、孝え方があります。

しかし他方、同じ年齢でもやけに早く老け込む人と、若々しくはつらつとした人がいるところを見ると、老化は生活環境や生活習慣に大いに影響されるのでは?とも考えらるかもしれません。

現代医学にも、生命活動を営む中で、細胞に分子レベルのさまざまな障害が蓄積した結果、老化が促進されるとい、孝え方があります。老化プログラム説と分子障害説はけっして対立するものではなく、遺伝的要因と環境的要因の相互作用によって、体の老化が生じると見るのが妥当でしょう。そのいずれの要因にも、活性酸素やフリーラジカルが輝く関係しているのです。

呼吸でとり込んだ酸素の%が活性酸素となる

活性酸素は病原体の侵入から動物が身を守るために備えた有力な武器であるということでした。その武器が細菌などを殺す場面で用いられるだけならば、なんの問題もなかったのですが、残念ながら、好中球やマクロファージによる炎症が別の場面でも おこり、虚血-再灌流においても合戦酸素が洪水のように発生して、生活習慣病の原因となっていることを見てきました。

好中球性炎症と虚血-再灌流以外に、私たちの体内で活性酸素が絶えず発生している場面が実はもう1つあるのです。私たちは生命活動を営む限り、酸素を呼吸しつづけています。酸素がなぜ必要かといえば、私たちの体をつくる細胞が、栄養をエネルギーに変える際の化学反応に酸素を利用しているからです。この化学反応、すなわちエネルギー代謝が行われるのは細胞内のミトコンドリアという小器官ですが、その代謝の過程で、とり込んだ酸素の一部がスーパーオキシドに化けてしまうのです。スーパーオキシドからは過酸化水素が生成され、過酸化水素からは毒性の強いヒドロキシルラジカルが生成されます。呼吸によて取り込んだ酸素のうちスーパーオキシドに化けるのは、ほんの1~2%と言われます。しかし、ある試算によれあ1日に併記1kgの酸素を呼吸しています。1年でおよそ368kgにもなり、80年生きる間には30トン近い酸素を消費します。

少なめに見積もって、その1%がスーパーオキシドに化けたと仮定しても、私たちの体はエネルギー代謝の場面だけで、一生の問に約294kgのスーパーオキシドの攻撃にさらされている計算になるのです。

好中球性炎症や虚血-再港流の場面にくらべ、一度に発生する量はわずかでも、このように絶えず発生しつづける活性酸素が体をゆっくりと老化させてゆくことは想像に難くありません。生命活動の根幹ともいうべきエネルギー代謝から活性酸素が細胞の内外に漏れ出し、老化を促進することを考えると、老化には確かに生物の宿命といえる側面があるようです。

女性は男性より活性酸素の体内発生量が少ない

わが国では女性が男性より約6歳長生きですが、他の国々を見ても、例外なく女性のほうが長寿です。私たちが生きている限り、体内では絶えずエネルギーが消費されています。暑くも寒くもない部屋で、ただ横になって安静にしているときでも、私たちの体は1日1200~1400kcalのエネルギーを消費します。

生命活動を維持するのに必要なこの最小限のエネルギー量を「基礎代謝」と呼んでいます。基礎代謝はその人の体の表面積におよそ比例しますので、平均的に見れば男性より小柄な女性のほうが基礎代謝は低くなります。つまり、女性は男性より少ないエネルギー消費で生活しているわけで、このため、一生の間に体内に発生する活性酸素の畳も少なくてすみます。このことが男性より体の老化のスピードを遅らせ、女性を長寿にしていると考えられるのです。

もう1つは性ホルモンの差です。女性の体内ではエストロゲン(女性ホルモン) が分泌され、ことに閉経を迎えるまでは血中濃度の高い状態がつづきます。このエストロゲンには抗酸化作用、すなわち活性酸素などを消去する作用が認められます。

女性の体は基礎代謝が低いだけでなく、エストロゲンの抗酸化作用のおかげで、活性酸素による障害を男性ほど受けずにすむのです。さらに、女性は鉄の体内貯蔵量が少ないことも、活性酸素の発生を抑制することにつながっています。女性が男性より長寿であるという事実は、活性酸素の体内発生量を低く抑え、発生した活性簡素を速やかに消去することが老化を防ぎ、長生きにつながる1つの有力な証拠といえます。