活性酸素を除去するスカベンジャー

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スカベンジャーは活性酵素を除去する

空気中の酸素が鉄をサビつかせるように、内因性および外因性の活性酸素やフリーラジカルが体の細胞を攻撃することを「酸化ストレス」と呼んでいます。

私たちの体がいかに休みなく酸化ストレスにさらされているかがよくわかったと思います。それならばなぜ、私たちはきょうにでもがんにならないのか、20代でシワだらけのおばあさんにならないのはなぜなのか、と不思議に思われ方も多いでしょう。

人間の体は進化の過程で、病原体の侵入に備える武器として、活性酸素を身につけました。しかし、それは同時に自分の体をもさいなむ両刃の剣でした。そこで、この剣をおさめる鞘をも備えた動物だけが、進化の中で生き残ってきたのです。

この鞘にあたる物質は活性酸素やフリーラジカルによる酸化を防ぐので「抗酸化物質」と呼ばれます。また、活性酸素やフリーラジカルを消去するので、英語で掃除屋、掃除具を意味する「スカベンジャー」の名でも呼ばれます。

スカベンジャーは抗酸化酵素と酵素以外の低分子物質に大きく分かれます。抗酸化酵素の主なものはスーパーオキシドジスムターゼ、カタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼなどです。一方、酵素以外の抗酸化物質の主なものとして抗酸化ビタミン、ユビキノンやフラボノイドなど一部のビタミン様作用物質、尿酸、ビリルビン(胆汁色素)などがあげられます。

これらのスカベンジャーは互いに密凄な関連を持ちながら、体内に発生する活性酸素やフリーラジカルの消去に働いています。刀の鞘となるこの消去機構がもし存在しなかったと仮定すれば、私たちの体は、みずからの内に発生した活性酸素やフリーラジカルの強力な酸化作用によって切り刻まれ、急速に老化するか、がんなどの病気になって、長くは生きられないに違いありません。

チンパンジーより長生きするのは

スーパーオキシドジスムターゼ(SOD) は名前からもわかるように、スーパーオキシドの消去に働く酵素です。「消去」というと、まるでSODが消しゴムか何かで、スーパーオキシドという書き損じをあとかたもなく消せるかのように思われるかもしれませんが、そう簡単ではありません。

SODははスーパーオキシドの分子を2個集め、電子を2個与えます。電子をもらったスーパーオキシドはフリーラジカルでなくなりますが、この反応から、過酸化水素が1分子生まれるのです。過酸化水素は放っておくと、鉄などと反応してスーパーオキシドよりはるかに障害作用の強力なヒドロキシルラジカルの発生源となります。

しかし、過酸化水素カタラーゼやグルタチオンペルオキシダーゼによって、無害な水と酸素に分解されるのです。

カタラーゼなどの協力が前提になりますが、他の活性酸素の発生源となるスーパーオキシドを消去するSODの作用はきわめて重要です。

米国国立老年学研究センターが10種類以上のサルの仲間について、SOD活性を比較したところ、SOD活性の高い種ほど長寿であることが判明しました。同様に、ビタミンE、C、尿酸などの体内量が多い種ほど長寿であることも知られています。女性が男性より長寿である理由の1つがエストロゲンの抗酸化作用にあったように、ヒトがチンパンジーやゴリラより長寿である理由はSODなどの抗酸化物質の活性の高さにあるのです。

スーパーオキシドの消去能力は加齢とともに低下する

スポーツで酸素消費量が高まったときやストレスで胃粘膜の虚血-再灌流が繰り返されるときなど、私たちの体はSOD活性を高めて、大量発生したスーパーオキシドを消去する能力を備えています。ところが、こうした緊急事態への適応能力は40歳前後を境に低下してきます。

スーパーオキシドが体内に充満しても、それを消去するSODの能力が追いつかなくなるのです。こうして活性酸素やフリーラジカルの体内発生量と、スカベンジャーの能力とのバランスがくずれると、坂を転げるように体の老化が加速します。この絆が一気にバランスを失えば、がんや虚血性疾患などの生活習慣病を招くと考えられるわけです。このことは、年をとるほど、酵素以外のスカベンジャーの役割が重要になることを意味しています。

痛風の原因になる尿酸も活性酸素の消去に役立つ

酵素以外のスカベンジャーに尿酸をあげておいたのを妙だと思われた方もおられるかもしれません。尿酸は、肉や卵などに多いプリン体という物質が分解されたもので、ヒトは尿酸を分解する酵素を持たないため、美食をつづける人にしばしば高尿酸血症が見られます。血液中の尿酸がふえるわけですが、この状態がつづくと、尿酸塩というガラスの破片のような結晶が血中にふえ、足の指などの関節にひっかかって炎症を引き起こします。

これが痛風という病気で、尿酸はその原因物質として臨床では確かに悪玉として見られることが多いものです。しかし、尿酸もやっかいな面ばかりではなく、血液などにとけ込んでフリーラジカルを消去し、水溶性のスカベンジャーとしてはビタミンCと並ぶ働きをしているのです。

尿酸はまた、鉄と結合して安定した物質になりますので、過酸化水素から鉄を介してヒドロキシルラジカルが生成するのを防ぎます。また、鉄を介してビタミンC が酸化され、効力を失うのを防ぎますので、体内のビタミンCを節約する役目も果たしています。

痛風は古くから知られていた病気でマケドニアのアレキサンダー大王も痛風だったといわれます。痛風と伝えられる著名人をあげてみると、ニュートン、フランクリン、ゲーテらは当時としては驚くほど長命な80歳すぎで亡くなっています。

フランス革命で刑死したルイ16世、精神錯乱をきたしたモーパッサンらを除けば、高齢でなお精力的に活動をつづけた人が多いようです。その理由の1つは、尿酸の抗酸化作用に求めることができるものと思われます。しかし、だからといって、体の老化を防ぎ、何歳になっても活動的でいるために、わざわざ痛風になる人はいないでしょう。ビタミンCなどの抗酸化ビタミンを積極的にとる意味がそこにあるのです。

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