ビタミンの作用を高める抗酸化物質

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道端の1枚の葉っぱにも未知の抗酸化物質が

最近、赤ワインや緑茶など抗酸化物質を含む食品が大きな注目を集めています。また、その他にも、植物性食品から日々新たな抗酸化物質が発見されているといっても過言ではありません。動物性のたんぱく質をこれまで以上に食べる習慣が定着してしまった現代人は、積極的に抗酸化物質を摂取する意識と行動が必要になるのは言うまでもありません。

これは考えてみれば当然のことで、植物はビタミン以外にもさまざまな抗酸化物質を蓄えることによって、紫外線の刺激で発生する活性酸素から身を守ってきたのです。試しに道端の草木の葉を1枚ちぎってみれば、そこには必ずや未知の抗酸化 物質が見つかるに違いありません。

現代人は、マスメディアの情報に流され、情報量の多さを、体にとっての重要度と混同しがちです。ピタミンから話題がやや離れますが、他の抗酸化物質について少し頭の中を整理しておきましょう。

フラボノイドを含むハーブもがんを防ぐ

米国では国立がん研究所を中心に「デザイナーフーズ・プログラム」といわれる植物性食品による発がん予防研究が1990年に始まりました。「デザイナーフーズ・プログラム」についてはこちら

この研究では、40種類近い野菜や果物などに発がん抑制効果が認められ、がん予防にとって重要性の高い順に並べたピラミッドが示されました。

これらの食品が持っている発がん抑制作用の多くが、活性酸素やフリーラジカルによる障害を防ぐ抗酸化物質の作用であることも明らかにされています。にんにくとキャベツが上位を占めたのは少し意外かもしれませんが、にんにく、にら、玉ねぎ、らっきょうなどのユリ科植物と、キャベツ、カリフラワー、ブロッコリー、芽牙キャベツなどのアブラナ科植物は、ともに抗酸化作用にすぐれた含硫化物を多く含んでいます。抗酸化作用によって変異原性抑制効果(遺伝子の障害を防ぐ効果) を示すフラボノイドを含む食品が多くあがっているのも"替徽的です。

甘辛はフラボノイドを含む生薬の1つですし、大豆もビタミンEだけでなく、ルチンやダイゼインなどのフラボノイドを豊富に含みます。ピラミッドの下段ではハーブが日立っていますが、これらの発がん抑制効果もフラボノイドによるところが大きいようです。オレガノに含まれるケルセチンは、玉ねぎに豊富で、ブラックカラントなど野生種に近いリーにも含まれます。

バスコダガマが航海を必須で続けた理由

航海をつづけた理由船員の3分の2を壊血病で失いながら航海をつづけたバスコダガマの目的は、こしょうなどの香草科でした。

当時の人々が命がけでこしょうを手に入れたがった理由は、肉料理の味をよくするだけでなく、こしょうを肉に塗ると抗酸化作用によって肉が傷みにくくなることを経験的に知っていたからです。

こしょうはあげられてい・ませんが、ショウガ科のターメリックが上位にランクされています。ターメリックの主成分はタルクミンという色素で、カレーのルーが黄色いのはこのタルクミンの色です。タルクミンは腸管粘膜から吸収される際、テトラヒドロタルクミンという強力な抗酸化物質に変わることが今日では明らかにされ、大腸がんなどの予防に期待が持たれています。

とうがらしのカブサンチン、カプサンチンは、赤ピーマンに含まれる赤色色素のことでカロテノイドの一種です。 抗酸化作用を持ち、善玉(HDL)コレステロールを上昇させる働きがあるため老化や動脈硬化を予防する働きがあります。 また近年ガンの予防効果も示唆され、注目されています。

ごまのセサミノールの抗酸化作用も注目されています。ゴマリグナンの1つであるセサミノールは、セサミンが代謝後に抗酸化作用を示すのに対し 、直接に強力な抗酸化作用があります。ゴマの種子中では配糖体の形で含まれており、体内 でセサミノールに変換され腸管から吸収され、細胞の酸化を抑える生理機能を持つとされています。

ハープや香辛料、またにんにく、しょうがごまなど、料理に風味を与える食品にはこのようにすぐれた抗酸化物質が発見されています。料理にひと手間をかけ、これらをまめに利用することが、体内の活性簡素の消去に役立つかもしれません。

日本古来の緑茶は強力な抗酸化剤

緑茶の渋み成分であるカテキンも広い意味ではフラボノイドの仲間に入り、その強力な墓素消去作用が注目されています。カテキンは、ポリフェノールの一種で、昔からタンニンと呼ばれてきた緑茶の渋みの主成分です。 カテキンの語源は、インド産のアカシア・カテキュー(マメ科アカシア属の低木)の樹液から採れる"カテキュー"に由来しています。
カテキンの効能、効果はこちらです。

カテキンは水溶性と脂溶性の中間的な性質を持つ物質で、緑茶の葉に湯を注げば、湯の中にとけ出します。つまり緑茶を飲むことでカテキンを手軽に摂取できるわけですが、そのカテキンは吸収されると、油でできている細胞膜の表面に付着するような形で存在するものと想像されています。細胞の内外にはビタミンCが、また細胞膜にはビタミンEやβ カロチンが存在しますが、カテキンはこれらの抗酸化ビタミンと分布の場所がやや異なることから、抗酸化ビタミンの作用を高める相乗効果が期待されているのです。

赤ワインを毎日飲んで動脈硬化を防ぐ

ブドウの果汁のみを原料とする白ワインにくらべ、赤ワインは果皮や種を含むブドウの実をまるごと発酵させてつくるため、果皮のアントシ アニンという色素や、ケルセチンなどのフラボノイド、カテキンなど、抗酸化物質を豊富に含みます。これらの抗酸化物質をまとめてポリフェノールとも呼んでいます。

欧米の多くの国では心臓病が死因の第l位を占め、その原因として乳脂肪などの動物性脂肪のとりすぎが指摘されてきました。

例外的にフランスでは乳脂肪の摂啄量が多いわりに心臓病が少なく、この事実は「フレンチ・パラドクス」と呼ばれ、医学者の頭を悩ませてきました。

フランスは赤ワインをよく飲む国で、1人あたり1日180cc(4日でボトルl本)を消費します。その赤ワインを2週間飲んだ人から採血してLDLを調べると、飲む前にくらべ、LDLが酸化されるまでの時間が延長し、酸化されにくくなっていることが国立健康・栄養研究所の実験で明らかになりました。

フレンチ・パラドクスを解く鍵は、赤ワインに豊富なポリフェノールがLDLの酸化を抑制する作用のあることがこうして解明され、赤ワインが一躍脚光を浴びることになったのです。

トマトジュースを毎日飲むとLDLの酸化が抑制される

しかし、緑茶のブームと同じことがここでもいえます。赤ワインがお好きなかたは、4日でボトル1本を超えないペースでお飲みになれば、アルコール性肝障害にもならず、動脈硬化や心臓病の予防効果が期待できるかもしれません。しかし、LDLを酸化されにくくする食品はなにも赤ワインばかりではないのです。トマトジュースを3週間飲んだ人から採血してL D L コレステロールを一重項酸素で酸化した実験の結果があります。

コレステロールが酸化されて生成する過酸化脂質の量が時間を追って調べられていますが、トマトジュースを飲む前にくらべ、過酸化脂質の生成量は有意に(統計的に誤差でなく)減少しました。これはトマトジュースの摂取により、カロテノイドのリコピンがL DLに入り、一重項酸素の消去に働いた結果と考えられるのです。

トマトを原料にたこうした健康食品が血圧を下げるという効能についても理解できるように思います。トマトのリコピンによるガン抑制効果はとても知られていますが、熱にも比較的強いので、野菜のトマト煮や、トマトソースのスパゲッティとして食べても、がん予防には有効です。また、旬のトマトを食べたほうが効果があるので夏のトマトをしっかりと食べるのがおすすめです。また、トマトはリコピンの効果以外にがんの予防に有効な成分が含まれています。たとえば、抗酸化作用のあるβカロチンや、ビタミンA 、C 、E 。そのほか、抗がん作用があるミネラルのセレン(セレニウム)、大腸がんを予防する食物繊維・ペクチンもそうです。抗酸化ビタミンとしても優秀ですが、抗ガン効果としても非常に有効な食材です。トマトのプロフィールはこちら

スカベンジャーの主役は抗酸化ビタミン

ヒトの血液には、ビタミンE、C、βカロチンがおよそ30対50対5 の比率で含まれています。血液中のビタミンEはほとんどがコレステロールを運ぶLDLなどのリポタンパク中に存在し、窒素を消去してLDLの酸化抑制に働いています。

LDL にはビタミンE のほか、αカロチン、β カロチン、リコピン、ルティンなどのカロテノイドが含まれ、これらも窒素の消去に働くようです。他方、赤ワインのポリフェノールをはじめ、紹介したさまざまな抗酸化物質が、血液中や細胞周辺にどのように分布し、抗酸化作用をどの程度担っているかについてはくわしくわかっていません。赤ワインポリフェノールはの効能、効果はこちら。

しかし、その重要度は、3種類の抗酸化ビタミンをけっして超えることはないと断言して差し支えありません。スカベンジャーの主役はあくまでビタミンであり、食品中の他の抗酸化物質はビタミンが不足したときにその作用を補い、ビタミンの作用を高める補助的な役割を担っているのです。

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