動脈硬化を進行させるのはLDLではなく活性酸素

動脈硬化が原因で死亡する人はがんより多い

「人は血管から老いる」といわれます。しなやかで弾力に宵む血管は加齢とともにかたく変性し、血管壁が厚くなって内腔を狭くします。

このような血管の老化現象を「動脈硬化」と呼んでいます。ことに問題なのは、動脈壁に酸化した脂肪などが沈着してこぶをつくり、内腔にせり出す場合です。このこぶは切開すると卵粥のように黄色く見えるので「粥状硬化」と呼ばれます。

粥状硬化が起こりやすいのは、心臓の冠動脈、脳動脈など、大動脈や中動脈です。粥状硬化によって狭まった冠動脈に血栓などが詰まれば心筋梗塞に、脳動脈に詰まれば脳梗塞になります。

現在、日本人の死因は第2位が脳卒中、第2位が心臓病ですが、心筋梗塞と脳梗塞を合わせた虚血性疾患の死亡数は、第1位のがんをも上回ります。その意味では、これらの虚血性疾患の温床となる動脈硬化は、がんよりもむしろ恐ろしい病気といえるかもしれません。

LDLは酸化しなければ、悪玉ではない

動脈硬化の原因といえば、コレステロールを思い浮かべる人が多いはずです。中には悪玉コレステロールとされるLDLコレステロールの値を健康診断のたびに気に病み、卵などを控えているかたもおられるかもしれません。そう認識するのは、専門医が熱心にそう訴えてきたからです。しかし、その専門医がいまや動脈硬化の原因はコレステロールばかりでなく、血液中に発生する活性酸素やフリーラジカルにあると認識を改 めつつあるのです。

コレステロールは油ですから、血液にとけません。このため、血液中ではLDL(低比重リポタンパク)やHDL (高比重リポタンパク) と呼ばれるタンカーの積み荷になって運ばれます。

HDLはコレステロールを全身の組織から肝臓へ運び込むタンカー、LDLは逆に全身の組織へとコレステロールを運び出すタンカーです。このため、HDLは動脈硬化を防ぐ善玉、LDLは悪玉と考えられてきました。しかし、LDLは全身の組織が必要としているコレステロールを届ける役目をするのですから、本来、悪玉ではないのです。

悪玉(LDL)と善玉(HDL)
https://health-memo.com/2012/03/18/hello-world/

酸化されたLDLを白血球が食べつづける

問題はこのタンカーが航海の途中で活性酸素という海賊に襲われ、酸化された場合で、船体はサビつき、積み荷の抽は過酸化脂質に化けてしまいます。

全身の組織にはLDLを認識してとり込むためのレセプター(受容体)がありますが、酸化されたLDLはレセプターに、もはや認識されず、組織にとり込まれることなく、血液中を漂流し始めます。やがて動脈壁に漂着したこの難破船を解体、収容するため、白血球のマクロファージが集まります。マクロファージは酸化されたLDLを異物として食べ始めますが、酸化LD Lの量が多いと、食べすぎでパンパンにふくれ、身動きとれなくなります。マクロファージのこのあわれな姿を「泡沫細胞」と呼んでいます。動脈硬化の初期には、動脈壁のあちこちに「脂肪斑」という病変が見られます。この脂肪斑とは、酸化LDLを食べた泡沫細胞にほかならないことが、今日では明らかになっています。

動脈硬化が進むほど、血管壁に過酸化脂質がふえる

31~91歳のヒトの大動脈について、粥状硬化の進行度と過酸化脂質の量を調べたデータを見ると、粥状硬化が進行するほど、動脈壁の過酸化脂質量がふえる比例関係が観察されます。

動脈硬化にとって問題なのはLDLレステロール自体ではなく、酸化されたLDLコレステロール(過酸化脂質の一種) であるということです。したがって、血中LDLコレステロールの値が少々高くても、これを酸化する活性酸素やフリーラジカルが血液中に少なければ、泡沫細胞はふえず、動脈硬化が進行することはありません。逆に血中LDLコレステロールが正常値の人でも、血液中の活性酸素が異常にふえた状態がつづけば、動脈硬化を招くおそれがあるわけです。動脈硬化を防ぎ、虚血性疾患を防ぐには、血液中の墓素の発生を抑え、あるいは速やかに消去することが第一なのです。