2型糖尿病は日本人の体質にマッチしてしまっている

膵臓は、血液中のブドウ糖の量が多いか少ないかを判断してインスリンの分泌量を調節しながら、血糖値が安定するように働いているのです。この流れをまとめると以下のようになります。食事をする→血液の中にブドウ糖が吸収されて血糖値が高くなる→膵臓でインスリンがつくられて血液中に分泌される→インスリンの作用で血液中のブドウ糖が細胞の中に取り込まれる→血糖値が下がると説明しましたが、そこで問題になるのが、膵臓のチカラです。

日本人は欧米人のように膵臓が発達していません。インスリンの分泌量も少なく、分泌のスピードも緩やかです。そのなかでも、生まれつき膵臓のβ 細胞が弱い人や、せっかくのβ 細胞を免疫細胞が自分の敵とみなして攻撃し、破壊してしまうタイプの糖尿病の人がいます。

これが、いわゆる1型糖尿病です。1型糖尿病は、通常若いときから発症するのですが、最近では中年期を過ぎてβ細胞を自分の免疫細胞が壊してしまう遅発型があるともいわれています。ただし、こういう人たちはとても数が少ないのです。いま世間を騒がせている糖尿病はこの1型ではなく、2型です。

日本人の糖尿病には、インスリンが少ししか出ない1型糖尿病のほかに、インスリンは少し出ているけれど働きの足りない日本人型2 型糖尿病(やせの糖尿病)、インスリンはたくさん出ているのに働きの悪い欧米人型2型糖尿病(肥満の糖尿病)があります。

2型はl型と違い、膵臓の機能がもともとは正常です。しかしβ細胞を酷使することによって、β細胞が疲弊してしまうのです。倹約型の進化をしてきた日本人は、インスリンの分泌能力が生来低いにもかかわらず、ここ数十年、脂肪の多い、日本人にとっては少々きつい食事をしてきました。

また、飽食の時代が到来し、三度の食事をお腹いっぱい食べ、さらにその合間に食べたり飲んだりしてきたので、β細胞は休む暇がありません。こうしてβ細胞を酷使してインスリンのムダ使いを長く続けてきた結果、膵臓が疲弊してβ 細胞の数が減ったり働きが落ちてしまっているのです。

すると、インスリンが正常に分泌されなくなり、分泌量が少なかったり、分泌のタイミングが遅れたりしてきます。β細胞が正常に働いている場合、食後の血糖値上昇開始とほぼ同時にインスリンの追加分泌(食後のインスリンの分泌) が起きて、速やかに血糖値を正常域まで下げます。ところが、インスリンの追加分泌が少なくなれば血糖値は下がりにくくなり、高血糖状態が長くなります。

また、日本人は先天的に追加分泌が遅い民族です。β細胞が壊れるとそれがさらに遅くなり、血糖値が上昇してからインスリンが分泌されるという事態になります。するとそこにタイムラグが生じ、血糖値が下がりにくくなります。

一度落ちてしまったβ 細胞の働きは、そう簡単には戻りません。いま、この世の中には多種多様な糖尿病薬がありますが、β 細胞を元どおりに修復してインスリン分泌を正常にさせるような薬は一つもないのです。こうしたインスリンの分泌異常のほかに、さらに重要な問題があります。それが、「インスリン抵抗性」(「インスリンの感受性が低くなる」ともいいます) です。細胞の表面にはインスリンと結合する受容体があり、インスリンがこれと結合して初めて、ブドウ糖が細胞に取り込まれます。

しかし受容体の働きが悪くて結合がうまくいかないと、インスリンがいくら分泌されても作用を発揮できません。これをインスリンの抵抗性といいます。戦後60年で、約4倍に増加した日本人の脂肪摂取量。この急激な脂肪の大洪水に体がついていけず、インスリンの感受性が低下している人が増えています。これが糖尿病の増加に、拍車をかけています。インスリンの分泌異常による糖尿病なのか、インスリン抵抗性のために起きる糖尿病なのか。自分の糖尿病はどちらなのか、知る必要があります。