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抗酸化ビタミンは、ビタミンC、E、βカロチンの3種類

抗酸化ビタミン、すなわち活性酸素やフリーラジカルを消去する作用のあるビタミンは、C 、E、β カロチンの3種類です(β カロチンは正確にはプロビタミンA で、カロテノイドの一種です。しかし、すでに述べたようにビタミンA の半分をβカロチンからとることが望ましいとされていますので、ビタミンの一種と認識しておいてもいいでしょう)。

ビタミンCは水溶性、Eとβカロチンは脂溶性です。私たちの体には、水の多い場所と 油の多い場所があります。細胞周辺でいえば、細胞膜はデリケートな抽を主成分とする一方、細胞の内や外は水で満たされています。

活性酸素は水の多い場所でも油の多い場所でも発生しますので、ビタミンC、ビタミンE、β カロチンは役割を分担したり、互いに協力し合いながら、神出鬼没の活性酸素やフリーラジカルを効率よく消去しているものと考えられています。

血漿中の活性酸素を即座に消去するビタミンC

ビタミンC はスーパーオキシド、ヒドロキシルラジカル、一重項酸素をいずれも消去できますが、最も重要な働きはスーパーオキシドの消去です。

スーパーオキシドと反応する速度をSODと比較すると、ビタミンCのそれは7000分の1 にすぎません。しかし、血漿(血液の液体成分)のようにSOD活性の低いところではビタミンCのスーパーオキシド消去作用が重要な意味を持ちます。

ヒトの血漿をとり、水溶性のラジカルを発生させる実験を行うと、まずビタミンC濃度が急激に低下するのが観察されます。次いでヒリルピン(胆汁色素)、尿酸、ビタミンEの順に消費され、これに伴ってコレステロールや中性脂肪が酸化された結果、過酸化脂質が血漿中に増加しはじめます。この実験からは、血漿などの水に多い場所に活性酸素やフリーラジカルが発生した場合、速やかに消去に働くのあビタミンCであることをよく示しています。

たとえば、たばこを吸って煙りに含まれるスーパーオキシドが肺から血液中に入った際、真っ先に反応して消去するのがビタミンCなのです。

ビタミンCは、副腎、心臓、脳などにも高濃度で含まれます。目の水晶体、角膜、眼房水、網膜などもビタミンCを多く含む組織です。こうした場所ではSODとともにビタミンCがスーパーオキシドの消去に重要な位置を占めているものと考えられます。

ビタミンCは鮮度で含有量が異なる点もしっかり考える必要があります。ビタミンCは、日々の生活の中でどうやったらたくさん摂取できるか?または、どうしたらビタミンCの量を減らさずにすむかを考える必要がありそうです。

細胞膜の酸化の連鎖反応を断ち切るビタミンE

他方、ビタミンEとβ カロチンは油の多い場所で、活性酸素やフリーラジカルの消去に働きます。ビタミンEは、細胞周辺では、細胞膜の表面に突き刺さったような形で存在しています。細胞膜にヒドロキシルラジカルの一撃が加わると、脂質ペルオキシルラジカルが多価不飽和脂肪酸を酸化して過酸化脂質をふやしながら、再び脂質ペルオキシルラジカルが生まれる反応が際限なく進行します。これが細胞膜の自動酸化ですが、ビタミンE は脂質ペルオキシルラジカルにみずからの電子を1個与え、この連鎖反応をくい止めるのです。

電子を与えたビタミンEは、クロマノキシルラジカル(ビタミンE ラジカル) というおだやかなラジカルになりますが、このラジカルで脂質ペルオキシルラジカルをもう1 分子、消去できます。

ビタミンEのこうした働きをさして「連鎖切断型抗酸化物質」あるいは「チェーン・ブレーカー」などと呼ぶこともあります。

脂質ペルオキシルラジカルを2分子消去したところでビタミンEは消費され、抗酸化作用を失います。ところが、このとき、細胞外液にビタミンCが豊富にとけ込んでいると、細胞膜から顔を出している酸化ビタミンEに電子を渡し、ビタミンEを再生することが試験管内実験から推測されているのです。

電子を渡して酸化されたビタミンCが、今度はおだやかなラジカルとなりますが、Cは水溶性ですので、老廃物として速やかに尿中に排泄されます。ビタミンC にはこのようにビタミンEの消費を節減する効果がありますので、Eだけ、Cだけを多く摂取した場合より、EもCも多く摂取した場合のほうがはるかに高い抗酸化作用を期待できるのです。

一方、β カロチンは、細胞膜では内部の深いところに存在し、一重項酸素の消去を得意としています。

活性酸素を除去するスカベンジャー

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スカベンジャーは活性酵素を除去する

空気中の酸素が鉄をサビつかせるように、内因性および外因性の活性酸素やフリーラジカルが体の細胞を攻撃することを「酸化ストレス」と呼んでいます。

私たちの体がいかに休みなく酸化ストレスにさらされているかがよくわかったと思います。それならばなぜ、私たちはきょうにでもがんにならないのか、20代でシワだらけのおばあさんにならないのはなぜなのか、と不思議に思われ方も多いでしょう。

人間の体は進化の過程で、病原体の侵入に備える武器として、活性酸素を身につけました。しかし、それは同時に自分の体をもさいなむ両刃の剣でした。そこで、この剣をおさめる鞘をも備えた動物だけが、進化の中で生き残ってきたのです。

この鞘にあたる物質は活性酸素やフリーラジカルによる酸化を防ぐので「抗酸化物質」と呼ばれます。また、活性酸素やフリーラジカルを消去するので、英語で掃除屋、掃除具を意味する「スカベンジャー」の名でも呼ばれます。

スカベンジャーは抗酸化酵素と酵素以外の低分子物質に大きく分かれます。抗酸化酵素の主なものはスーパーオキシドジスムターゼ、カタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼなどです。一方、酵素以外の抗酸化物質の主なものとして抗酸化ビタミン、ユビキノンやフラボノイドなど一部のビタミン様作用物質、尿酸、ビリルビン(胆汁色素)などがあげられます。

これらのスカベンジャーは互いに密凄な関連を持ちながら、体内に発生する活性酸素やフリーラジカルの消去に働いています。刀の鞘となるこの消去機構がもし存在しなかったと仮定すれば、私たちの体は、みずからの内に発生した活性酸素やフリーラジカルの強力な酸化作用によって切り刻まれ、急速に老化するか、がんなどの病気になって、長くは生きられないに違いありません。

チンパンジーより長生きするのは

スーパーオキシドジスムターゼ(SOD) は名前からもわかるように、スーパーオキシドの消去に働く酵素です。「消去」というと、まるでSODが消しゴムか何かで、スーパーオキシドという書き損じをあとかたもなく消せるかのように思われるかもしれませんが、そう簡単ではありません。

SODははスーパーオキシドの分子を2個集め、電子を2個与えます。電子をもらったスーパーオキシドはフリーラジカルでなくなりますが、この反応から、過酸化水素が1分子生まれるのです。過酸化水素は放っておくと、鉄などと反応してスーパーオキシドよりはるかに障害作用の強力なヒドロキシルラジカルの発生源となります。

しかし、過酸化水素カタラーゼやグルタチオンペルオキシダーゼによって、無害な水と酸素に分解されるのです。

カタラーゼなどの協力が前提になりますが、他の活性酸素の発生源となるスーパーオキシドを消去するSODの作用はきわめて重要です。

米国国立老年学研究センターが10種類以上のサルの仲間について、SOD活性を比較したところ、SOD活性の高い種ほど長寿であることが判明しました。同様に、ビタミンE、C、尿酸などの体内量が多い種ほど長寿であることも知られています。女性が男性より長寿である理由の1つがエストロゲンの抗酸化作用にあったように、ヒトがチンパンジーやゴリラより長寿である理由はSODなどの抗酸化物質の活性の高さにあるのです。

スーパーオキシドの消去能力は加齢とともに低下する

スポーツで酸素消費量が高まったときやストレスで胃粘膜の虚血-再灌流が繰り返されるときなど、私たちの体はSOD活性を高めて、大量発生したスーパーオキシドを消去する能力を備えています。ところが、こうした緊急事態への適応能力は40歳前後を境に低下してきます。

スーパーオキシドが体内に充満しても、それを消去するSODの能力が追いつかなくなるのです。こうして活性酸素やフリーラジカルの体内発生量と、スカベンジャーの能力とのバランスがくずれると、坂を転げるように体の老化が加速します。この絆が一気にバランスを失えば、がんや虚血性疾患などの生活習慣病を招くと考えられるわけです。このことは、年をとるほど、酵素以外のスカベンジャーの役割が重要になることを意味しています。

痛風の原因になる尿酸も活性酸素の消去に役立つ

酵素以外のスカベンジャーに尿酸をあげておいたのを妙だと思われた方もおられるかもしれません。尿酸は、肉や卵などに多いプリン体という物質が分解されたもので、ヒトは尿酸を分解する酵素を持たないため、美食をつづける人にしばしば高尿酸血症が見られます。血液中の尿酸がふえるわけですが、この状態がつづくと、尿酸塩というガラスの破片のような結晶が血中にふえ、足の指などの関節にひっかかって炎症を引き起こします。

これが痛風という病気で、尿酸はその原因物質として臨床では確かに悪玉として見られることが多いものです。しかし、尿酸もやっかいな面ばかりではなく、血液などにとけ込んでフリーラジカルを消去し、水溶性のスカベンジャーとしてはビタミンCと並ぶ働きをしているのです。

尿酸はまた、鉄と結合して安定した物質になりますので、過酸化水素から鉄を介してヒドロキシルラジカルが生成するのを防ぎます。また、鉄を介してビタミンC が酸化され、効力を失うのを防ぎますので、体内のビタミンCを節約する役目も果たしています。

痛風は古くから知られていた病気でマケドニアのアレキサンダー大王も痛風だったといわれます。痛風と伝えられる著名人をあげてみると、ニュートン、フランクリン、ゲーテらは当時としては驚くほど長命な80歳すぎで亡くなっています。

フランス革命で刑死したルイ16世、精神錯乱をきたしたモーパッサンらを除けば、高齢でなお精力的に活動をつづけた人が多いようです。その理由の1つは、尿酸の抗酸化作用に求めることができるものと思われます。しかし、だからといって、体の老化を防ぎ、何歳になっても活動的でいるために、わざわざ痛風になる人はいないでしょう。ビタミンCなどの抗酸化ビタミンを積極的にとる意味がそこにあるのです。

ビタミンC たぷりレシピ一覧 はこちら。

こんなタイプは体内に多くの活性酸素が発生している

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タイオシキンや残留農薬も活性酵素の発生源

活性酸素やフリーラジカルが体内に発生する原因は内因と外因に分けることができます。

内因性の発生源の主な場面として好中球性の炎症、ストレスなとによる虚血-再灌流、エネルギー産生に伴、漏出がありました。

一方、外因性の発生源は、すでにふれた紫外線と発がん物質のほかにも数多くの場面が知られています。最近、注目されている環境ホルモンの問題では、多くの化学物質が、従来考えられていたよりもはるかに微量で体に作用し、内分泌系をかき乱す可能性のあることが指摘されています。

環境庁がリストアップした約70種類の環境ホルモンのうち、筆頭にあがっているのが、ダイオキシンです。ダイオキシンはゴミの焼却過程で生成したり、除草剤に不純物として含まれる毒性の強い化合物で、わが国でも川魚やしじみなどから検出されています。

ダイオキシンの毒性の一部は、その刺激によって体内に多量のフリーラジカルを発生させ、細胞膜の自動酸化を引き起こし、細胞を壊死に至らしめることによるものと考えられています。

農薬では、除草剤のパラコートなどがフリーラジカルの発生源となります。日光の紫外線はその刺激で生物の体内に活性酸素やフリーラジカルを発生させますが、その日光をさんさんと浴びている植物が枯れないのは、抗酸化ビタミンやフラボノイドなどの抗酸化物質を豊富に蓄えているからです。

しかし、なんらかの原因で活性酸素やフリーラジカルの発生量が著しくふえると、抗酸化物質による防御システムが破綻し、その植物はたちまち枯れます。パラコートは多量のフリーラジカルを発生させて雑草を枯らしたのち、土にふれると不活性な形になり、すぐに作物を植えつけることができるため、すぐれた除草剤として広く利用されているのです。

このパラコートを吸い込んだり、野菜などの残留農薬を口にすれば、当然、体内でもフリーラジカルが発生します。四塩化炭素は米国では大麦、とうもろこしなどの穀物の収穫後に殺虫剤として燻蒸される農薬の一種ですが、わが国ではドライクリーニング液の成分などとして使用されます。この四塩化炭素も体内に入るとフリーラジカルの発生源となり、主に肝機能を障害して脂肪肝などを招くことが知られています。

フリーラジカルが酸性雨を降らせる

都会に見られる大気汚染物質の中には、フリーラジカルの発生源となり、またそれ自身もフリーラジカルとして作用するものが多く含まれています。自動車の排気ガス、ことにディーゼルエンジンから排出される排気ガスは一酸化窒素、二酸化窒素、オゾンなどのフリーラジカルやラジカルの発生源となる物質を多量に含んでいます。

一酸化窒素や二酸化窒素は細胞膜の多価不飽和脂肪酸から電子を引き抜き、自動酸化を引き起こして細胞を傷めつけることが知られています。

これらは呼吸によって肺にとり込まれますので、肺気腫や気管支ゼンソクなど、主に肺や気管支にダメージを与えます。

地球の上空ではまた、酸素と水素から過酸化水素が発生しています。これ自体は自然現象ですが、オゾン層が薄くなったおかげで紫外線の影響が強まり、過酸化水素が紫外線で分解され、ヒドロキシルラジカルの発生量がふえています。工場の煤煙や自動車の排気ガスに含まれる一酸化窒素や二酸化窒素、亜硫酸ガスが上空に上り、ヒドロキシルラジカルと反応すると、硝酸や硫酸ができます。これらが問題の酸性雨となって地上に降り注いでいるのです。

ダイオキシンについてはこちら。

活性酸素は皮膚や目の老化もすすめてしまう

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コラーゲンの織物が肌の張りを保っている

動脈硬化が血管の老化なら、シワやシミ、かさつきなどは皮膚にあらわれる老化です。こうした肌の老化も活性酸素やフリーラジカルが原因であることがわかってきました。

皮膚は外側から、表皮、真皮、皮下組織の3層に分かれます。

表皮は表皮細胞がれんがのようにぎっしり積み重なった厚さ0.1~0.3cmほどの薄い層です。表皮は一生を通じて、約28日の周期でターンオーバー(再生) を繰返しています。

古くなった表皮細胞は、新しくできた表皮細胞に押し上げられるようにして、垢となってはがれ落ちます。

一方、真皮はその10倍ほどの厚い層で、コラーゲンなどのタンパク質あの線維が、美しい織物のように編まれ、肌に張りを与えています。コラーゲンの織物のすき問は、ヒアルロン酸という成分で埋められています。ヒアルロン酸は糖が鎖のようにつながったもので、わずか1グラムで6リットルの水をかかえ込める保湿成分として、肌にうるおいを与えます。冬の肌がかさかさする時期にコラーゲンを摂ると肌がみずみずしくなるのはこのためです。

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肌のシワやかさつきの原因は紫外線UV-A

この真皮に多量の活性酸素やフリーラジカルが発生すると、真皮の構造が乱れてきます。コラーゲンの豊かさが減り、「架橋結合」といって織物の編み目が飛んだりゆるんだりします。

ヒアルロン酸の糖鎖もずたずたに切断され、保水力が失われます。表皮が絶えず再生されているにもかかわらず、年齢を重ねると、肌のシワがふえ、かさついてくるのは、このように活性酸素などの悪さによって真皮が変性してくるためです。その真皮に活性酸素が発生する原因として、最も重視されているのが紫外線なのです。

紫外線は地表に届く太陽光線の中で波長が最も短く、約5%を占める光線で、波長の短いほうから、UV-C、UV -B、UV IAに分かれます。このうちUV ICは大気圏の外にあるオゾン層にさえぎられ、地表に届きませんが、UV-BとU VーAは絶えず地表に降り注ぎ、UVーBは表皮まで届きます。UV-Aはさらに深く真皮まで達して皮膚の老化を促進するのです。

皮膚への障害作用が強いUV-Bが増加している

夏のよく晴れた日に「虫干し」といって、衣類や本を日に当てる昔からの習慣がありますが、この虫干しは紫外線の強力な殺菌作用を無意識に利用したものといえます。

紫外線はその刺激によって小さな虫の体内にフリーラジカルを発生させ、虫をを殺すのです。オゾン層はこのような紫外線の毒性から地球上の生物を守る役目をしてきましたが、近年はその破壊が進み、日本上空のオゾン層も薄くなりつつあることが環境白書などで指摘されています。

従来は地表に届く紫外線の1割がUV-B、9割がUV-Aといわれてきましたが、オゾン層の破壊に伴い、地表に降り注ぐUV-B量の増加が問題となっています。UV-Bは表皮までしか届かないものの、皮膚への障害作用はUV-Aの1000倍以上とされます。

夏の海水浴などで肌をやくと、皮膚がやけどのように真っ赤にはれ上がることがありますが、これはUV-Bの刺激で表皮に発生した一重項酸素などによる皮膚の炎症です。

紫外線を実験的に皮膚に照射すると、照射した時間に比例して、皮膚に過酸化脂質がふえてきます。

これは皮膚に発生した一重項酸素などの活性酸素やフリーラジカルによって、表皮細胞の膜が酸化される証拠です。UV-Bはこのように、肌に過酸化脂質をふやし、シミをつくる原因になります。

熱帯魚がカラフルな理由

UV-Bの障害作用はこれにとどまらず、長年浴びつづける間には表皮細胞の遺伝子に損傷を与え、皮膚がんの原因となります。こうした障害を防ぐため、表皮の底のほうにある色素細胞(メラノサイト) でつくられるのが、メラニンです。

メラニンは肌をこんがり黒く見せる色素で、紫外線をよく吸収し、紫外線の刺激で発生したフリーラジカルの消去に働いているのです。熱帯魚は不思議とどれも青や赤などのカラフルな色素を身にまとっていますが、あの色素にも活性酸素やフリーラジカルを消去する作用があるのです。長い進化の過程で、強烈な紫外線から身を守る色素を表皮に持った魚だけが、熱帯の海で生き残ることができたのです。

ヒトの皮膚に沈着するメラニンは熱帯魚のカラフルな色にあたるもので、UV-Bの強力な障害作用から表皮細胞を保護しています。表皮のメラニンの量は黒人、黄色人種、白人の順に減りますが、皮膚がんの発生率は白人に非常に多く、黒人にはまれなことが知られています。

黄色人種である日本人も60~70歳になると、皮膚がんの前がん状態とされる日光角化症が高い率で発生していますので、紫外線にはじゅうぶんな注意が必要です。

スキー場で目がちかちかするのも活性酸素が原因

夏の砂浜やプールサイドで、人々が甲ら干しをする光景をよく見かけます。最近は冬でもサンタンルームを利用して人工の紫外線を浴び、小麦色の肌を自慢している人たちがいますが、

このように自分から進んで紫外線を浴びることは、体内の活性酸素発生量をふやす、自殺行為に等しいといえるかもしれません。

夏の海水浴などでは、紫外線の侵入を防ぐサンスクリーン(日やけ止めの乳液など) で紫外線から肌を守ることが大切です。

肌で注意した3つのトラブル(日焼け)

一方、冬のスキー場でサングラスやゴーグルをかけずにいると、目が充血し、チカチカしてあけていられない症状があらわれます。これは「雪眼炎」と呼ばれ、雪原に反射する紫外線の刺激で日の水晶体(レンズ状の組織)に発生した活性酸素の障害作用によるものです。雪眼炎は一時的な症状ですみますが、紫外線で目を長年傷めつづけると、水晶体を形づくるタンパク質線維やヒアルロン酸がダメージを受けます。

皮膚に見られる老化が日にも起こるわけですが、損傷がひどくなると、水晶体が白濁して視力が著しく低下する「老人性白内障」を招きます。

紫外線の強い日の外出にはサングラスをかけるなどして目を保護することがたいせつですが、日に発生した活性酸素を消去するには、抗酸化ビタミンを含む目薬をさすことも有効と思われます。抗酸化ビタミンはまた、サプリメントとして摂取した場合にも、血液によって皮膚や目に運ばれ、活性酸素の消去に働くと考えられます。

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動脈硬化を進行させるのはLDLではなく活性酸素

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動脈硬化が原因で死亡する人はがんより多い

「人は血管から老いる」といわれます。しなやかで弾力に宵む血管は加齢とともにかたく変性し、血管壁が厚くなって内腔を狭くします。

このような血管の老化現象を「動脈硬化」と呼んでいます。ことに問題なのは、動脈壁に酸化した脂肪などが沈着してこぶをつくり、内腔にせり出す場合です。このこぶは切開すると卵粥のように黄色く見えるので「粥状硬化」と呼ばれます。

粥状硬化が起こりやすいのは、心臓の冠動脈、脳動脈など、大動脈や中動脈です。粥状硬化によって狭まった冠動脈に血栓などが詰まれば心筋梗塞に、脳動脈に詰まれば脳梗塞になります。

現在、日本人の死因は第2位が脳卒中、第2位が心臓病ですが、心筋梗塞と脳梗塞を合わせた虚血性疾患の死亡数は、第1位のがんをも上回ります。その意味では、これらの虚血性疾患の温床となる動脈硬化は、がんよりもむしろ恐ろしい病気といえるかもしれません。

LDLは酸化しなければ、悪玉ではない

動脈硬化の原因といえば、コレステロールを思い浮かべる人が多いはずです。中には悪玉コレステロールとされるLDLコレステロールの値を健康診断のたびに気に病み、卵などを控えているかたもおられるかもしれません。そう認識するのは、専門医が熱心にそう訴えてきたからです。しかし、その専門医がいまや動脈硬化の原因はコレステロールばかりでなく、血液中に発生する活性酸素やフリーラジカルにあると認識を改 めつつあるのです。

コレステロールは油ですから、血液にとけません。このため、血液中ではLDL(低比重リポタンパク)やHDL (高比重リポタンパク) と呼ばれるタンカーの積み荷になって運ばれます。

HDLはコレステロールを全身の組織から肝臓へ運び込むタンカー、LDLは逆に全身の組織へとコレステロールを運び出すタンカーです。このため、HDLは動脈硬化を防ぐ善玉、LDLは悪玉と考えられてきました。しかし、LDLは全身の組織が必要としているコレステロールを届ける役目をするのですから、本来、悪玉ではないのです。

悪玉(LDL)と善玉(HDL)
https://health-memo.com/2012/03/18/hello-world/

酸化されたLDLを白血球が食べつづける

問題はこのタンカーが航海の途中で活性酸素という海賊に襲われ、酸化された場合で、船体はサビつき、積み荷の抽は過酸化脂質に化けてしまいます。

全身の組織にはLDLを認識してとり込むためのレセプター(受容体)がありますが、酸化されたLDLはレセプターに、もはや認識されず、組織にとり込まれることなく、血液中を漂流し始めます。やがて動脈壁に漂着したこの難破船を解体、収容するため、白血球のマクロファージが集まります。マクロファージは酸化されたLDLを異物として食べ始めますが、酸化LD Lの量が多いと、食べすぎでパンパンにふくれ、身動きとれなくなります。マクロファージのこのあわれな姿を「泡沫細胞」と呼んでいます。動脈硬化の初期には、動脈壁のあちこちに「脂肪斑」という病変が見られます。この脂肪斑とは、酸化LDLを食べた泡沫細胞にほかならないことが、今日では明らかになっています。

動脈硬化が進むほど、血管壁に過酸化脂質がふえる

31~91歳のヒトの大動脈について、粥状硬化の進行度と過酸化脂質の量を調べたデータを見ると、粥状硬化が進行するほど、動脈壁の過酸化脂質量がふえる比例関係が観察されます。

動脈硬化にとって問題なのはLDLレステロール自体ではなく、酸化されたLDLコレステロール(過酸化脂質の一種) であるということです。したがって、血中LDLコレステロールの値が少々高くても、これを酸化する活性酸素やフリーラジカルが血液中に少なければ、泡沫細胞はふえず、動脈硬化が進行することはありません。逆に血中LDLコレステロールが正常値の人でも、血液中の活性酸素が異常にふえた状態がつづけば、動脈硬化を招くおそれがあるわけです。動脈硬化を防ぎ、虚血性疾患を防ぐには、血液中の墓素の発生を抑え、あるいは速やかに消去することが第一なのです。

活性酸素 VS フリーラジカル

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ペアでない電子がある物質は強力な酸化作用を持つ

炎症や虚血-再灌流で体内に発生する活性酸素は、がんなどの生活習慣病の原因ともなっています。その活性酸素を消去する抗酸化ビタミンの働きを紹介するのがこの章の目的ですが、その話題に入るには「フリーラジカル」についても重要です。

活性酸素にスーパーオキシド、過酸化水素、ヒドロキシルラジカル、一重項酸素の4種類があります。また。それぞれの分子を見ると、過酸化水素や一重項酸素では酸素と同様、すべての電子が2個ずつの対になっているのに対して、スーパーオキシドとヒドロキシルラジカルの分子は対からあぶれた1個の電子を持っています。

この電子を「不対電子」といいます。昔、理科の時間に酸化とは酸素が他の物質と結合することだと習ったかと思いますが、現在の化学で酸化をより正確に定義すると、Aという物質がBという物質から電子を奪うことを「AがBを酸化する」「BがAによって酸化される」と表現するのです。不対電子があると、他の物質から電子を奪って安定しようとしますので、その物質は非常に強い酸化作用を持ちます。

このような不対電子を持つ物質を「フリーラジカル」、略して「ラジカル」と呼んでいます。フリーラジカルはいわば、食事の最中に箸(電子) を1本なくした人ついのようなものです。箸は対でなければ食事ができませんから、フリーラジカルは隣の人から箸を1本盗みます。すると、盗まれた隣の人が今度はフリーラジカルになり、また隣の人から箸を盗みます。こうして周囲の物質を次々に酸化するのがフリーラジカルの特徴なのです。

細胞膜の働きはPUFAによって繊細に働く

したがって、活性酸素の中で、スーパーオキシドとヒドロキシルラジカルはフリーラジカルですが、過酸化水素と一重項酸素はフリーラジカルではありません(図訂)。ことにヒドロキシルラジカルはスーパーオキシドにくらべ、数十倍の酸化作用を持つ危険分子で、体内にひとたびあらわれるや、細胞をさまざまな形で傷つけます。

よく知られているのは、これらのラジカルの仲間が細胞膜の自動酸化の引き金になることです。ここで、その悪漢ぶりをしかと見ておきましょう。私たちの体はおよそ60兆個の細胞の集まりですが、細胞の内も外も水で満たされる一方、細胞膜は「多価不飽和脂肪酸(PUFA)」を皇宮に含む抽でできています。

脂肪酸とは炭素原子が鎖状に並んだものです。炭素原子の4本の手のうち2本は隣り合った炭素原子どうしでつなぎ合っていますが、残る2本の手をどうしているかで脂肪酸の性質が決まってくるのです。残る2本の手がすべて水素原子と結び合っているため、鎖の形がきれ

活性酸素は胃に2重で負担をかけてしまう

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ストレスが胃に与える影響

活性酸素が体に障害を及ぼす場面として、好中球性の炎症と虚血-再灌流について説明しましたが、身近な例では、胃・十二指腸潰瘍の発症にも活性酸素の障害作用が深くかかわっています。

胃・十二指腸登場の原因といえばまず、ストレスを思い浮かべる読者が多いかもしれません。ストレスと胃潰瘍の関係は、たとえばネズミを身動きできないように縛り、首から下を数時間、水につけておくと、胃潰瘍ができるという実験からも明らかです。そのメカニズムは必ずしも明らかではありませんでしたが、虚血-再灌流によって説明できるようになりました。

潰瘍とは粘膜などの組織の一部が欠けてえぐれた状態をさす言葉ですが、ストレスを受けた胃粘膜では、血管が強く収縮し、血流の一時的な低下が起こり、組織に血液が不足した状態に陥ります。この虚血状態のあと、再灌流に伴って発生する多量の活性酸素が胃粘膜にダメージを与え、渡歩をつくることがわかってきたのです。

ピロリ菌に感染した胃潰瘍には好中球が多い

ところで、最近、難治性の胃・十二指腸潰瘍や慢性胃炎の原因としてヘリコバクター・ピロリという細菌の感染が注目されています。この細菌は体がらせん状( ヘリコ)べんもうで長い鞭毛を持ち、胃の出口(ピロリ) 付近の粘液中に棲みついています。

胃酸にさらされる胃袋の中では細菌のほとんどが死滅しますが、ピロリ菌はアンモニアをみずから合成して、周りをアルカリ性の」環境に変え、胃粘膜に棲みつく能力を持っているのです。

胃粘膜に起きた好中球性の炎症であることが明らかになりました。ことに、以前は胃粘膜の老化現象と見られていた慢性萎縮性胃炎や、いったん治っても容易に再発してくる易再発性の胃・十二指腸潰瘍、さらには胃がんにも、ピロリ菌感染が憲にかかわっていることがわかってきました。

このため、欧米では胃・十二指腸潰瘍の治療に、従来の酸分泌抑制剤に加え、抗生物質によるピロリ菌の除菌療法が試みられ、除菌に成功すると胃粘膜に浸潤していた好中球の数がしだいに減ってくることも観察されています。

胃粘膜にピロリ菌が感染している患者さんが、仕事などで強いストレスにさらされれば、好中球の出す活性酸素に加え、虚血-再灌流に伴う活性酸素の洪水が胃粘膜を襲い、二重のメカニズムで胃粘膜を傷めつけることになります。

活性酸素が洪水のように押し寄せる場合

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心筋梗塞の発作が起きる原因

体内で活性酸素が多量に発生する場面として、好中球などによる炎症きのほかにもう1つ、「虚血-再灌流」をあげることができます。

「虚血」とは、血流がとだえ、組織に血液が不足した状態のことで、「再灌流」は、とだえていた血流が再開することをさします。

心筋梗塞や脳梗塞などは、血管が詰まって組織が虚血に陥る点で共通しているので「虚血性疾患」と呼ばれます。この病名は耳慣れないかもしれませんが、日本人の死因で最も多いのが、実は虚血性疾患です。

「虚血-再灌流」に伴う活性酸素の障害作用に早くから注目したのは、その虚血性疾患を治療する臨床医たちでした。

心筋梗塞では、心臓自体を養っている冠動脈に血栓(血液成分のかたえしまり) などが詰まり、心筋に壊死(部分的な死) が起こり、心臓のポンプ機能が停止します。その温床となるのは、動脈硬化です。

冠動脈の内腔が狭くなり、正常な状態の25%程度しか血液が流れない血管の枝ができると、一過性の胸痛を導徽とする狭心症の発作が起こります。

冠動脈の狭窄がさらに進み、完全に閉塞してしまうと、心筋梗塞の発作となるわけです。そこで、狭心症や心筋梗塞の患者さんには、PTCA (経皮的冠動脈形成術) などの治療が施されてきました。

PTCAは、狭くなった冠動脈内にバルーン(風船) つきのカテーテルを挿入し、バルーンをふくらませて、狭くなった部分を押し広げる治療法です。

心筋の壊死は虚血によって起こるのですから、血流を再開して酸素の供給を元に戻してやれば、心筋を壊死から救えると臨床医のだれもが思いました。

ところが、実際には、PTCAを施した心筋梗塞の患者さんの中に梗塞巣が広がり、不整脈が出るなどかえって重症化するケースが出てきたのです。

血流の再開した心臓に洪水のようにあふれる活性酸素

その原因を調べてみると、血流の再開に伴って活性酸素がまるで洪水のように心筋を襲い、ダメージを与えていることがわかりました。こうしたことがきっかけで、心筋梗塞の発作そのものも、虚血によって単に酸素の供給がとだえただけでなく、「虚血-再灌流」の結果、発生した多量の活性酸素が冠動脈内に血栓を形成し、冠動脈のスパスムなどを招いて起こることが明らかになったのです。

「虚血-再灌流」に伴う活性酸素の障害作用を防ぐため、現在では、狭心症や心筋梗塞の患者さんに活性酸素を消去する作用のあるビタミンEやユビキノン が投与されています。

臓器移植についてですが、ドナーから摘出した臓器は血液が循環しないため、棲端な虚血状態におかれます。その臓器を患者さんに移植すると、血液の再港流に伴い、発生した多量の活性酸素によって、せっかく移植した臓器が傷めつけられてしまいます。このような障害を防ぐため、移植する臓器にあらかじめ抗酸化剤を注入して、活性酸素の発生を抑える方法がとられています。

活性酸素の強力な作用

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1gの酸素で10gの鉄はポロポロになる

体内に細菌などが侵入すると、白血球の中で最も数が多く、70%近くを占める「好中球」という細胞が真っ先に駆けつけ、細菌をまる飲みにします。

同じ白血球の仲間で「マクロファージ」と呼ばれる大きな細胞も細菌などの異物の捕食に働き、好中球の10倍以上の食作用を発揮することから「大食細胞」のニックネームがついています。

これらの白血球は活性酸素の強力な酸化作用を利用して、食べた細菌を殺し、異物を分解するのです。自転車などのサビ、りんごの切り口の変色、サラダ油やコーヒー豆、ワインなどの変敗などなど。

身近なところをさがしただけでも、酸素がその酸化作用によって悪さをする例は、あげればきりがありません。1リットル(牛乳1パック分) の酸素は10gの鉄をサビでボロボロにしてしまうほどの酸化作用を秘めていますが、活性酸素は、その酸化作用が何倍も強力になった酸素で、スーパーオキシド、過酸化水素、ヒドロキシルラジカル、一重項酸素の4種類が知られています。好中球やマクロファージがまず放出するのはスーパーオキシドです。

スーパーオキシドは酸素に原子が余計に1個ついたもので、これが反応をへて過酸化水素を生じ、殺菌作用を発揮します。過酸化水素はさらに活性酸素の中でも酸化作用の最も強力なヒドロキ、ツルラジカルの発生源となります。

このような活性酸素の稔攻撃にあった細菌はひとたまりもなく殺されます。その意味で活性酸素は確かに私たちの生存に役立っているのですが、やっかいなことに、好中球やマクロファージは細菌などのいない場所でも多量の活性酸素を放出することが少なくないのです。

野球選手ピッチャーの肩の炎症も活性酸素

たとえば転んで体のどこかを打撲すると、患部は炎症を起こし、はれて熟を持ちます。野球のピッチャーなども、力投したあとに肩やひじを冷やしているのをテレビ中継で見かけますが、こうした急性の炎症も好中球などの放出する活性酸素によって引き起こされるのです。

好中球は、ふだんは血液やリンパ液の流れに乗って全身をパトロールしたり、リンパ節に集合したりしていますが、細菌に感染して粘膜の細胞がやられると、壊れた細胞から好中球に非常事態を知らせ、患部へ呼び集める物質が放出されます。

この物質はサイトカインと呼ばれますが、打撲などで細胞がつぶれたときにも、このサイトカインが出て好中球を不必要に呼び集め、炎症を招いてしまうわけです。

胃炎から歯肉炎まで「炎」の字がつく多くの病気には、好中球などの放出する活性酸素が深くかかわっています 。好中球やマクロファージなどはこうした炎症を引き起こす細胞という意味で「炎症細胞」とも呼ばれています。

炎症とは、私たちの体に備わった剣が細菌などの病原体を殺し、その返す刀で自分の体を切りつけてしまったよ、義気といえます。