危険なのは食後の高血糖

最近、糖尿病で旬な話題といえば、やはり食後高血糖の問題です。食後高血糖とは、文字どおり食後の血糖値が高い状態です。食事をすると、ブドウ糖が血中に吸収され、血糖値が上がります。しかし、インスリンがすぐに分泌されてブドウ糖は細胞に取り込まれ、血糖値は下がっていきます。ところが、このインスリンの作用に異常があり、食後2時間たっても血糖値が下がらない。これが、食後高血糖です。

食後高血糖であるかどうかは、ブドウ糖負荷試験を受ければわかります。ただしこの検査は糖尿病の疑いがある場合に実施される検査なので、誰でも受けられるわけではありません。ブドウ糖負荷試験の判定基準は、ブドウ糖が入ったジュースを飲んで2時間たったときの血糖値が140mg/dl未満は正常、200mg/dl以上は糖尿病と診断されます。

そして正常と糖尿病の境界域(140~220mg/dl未満) は「食後高血糖(IGT)」と呼ばれ、「境界型糖尿病」と診断されます。

ブドウ糖が入ったジュースを飲む前の空腹時血糖値が境界型(110~126mg/dl未満)の場合は「空腹時高血糖(IFG)」と呼ばれ、こちらも同じように「境界型糖尿病」と診断されます。

日本の分類は、糖尿病型、境界型、正常型の3段階ですが、WHO(世界保健機関)の分類はIFG、IGTを入れた4段階です。最近とくに食後高血糖が重視されているのは、国内外の疫学調査や大規模臨床試験で、食前の空腹時血糖値は正常でも食後の血糖値が高いと、心血管疾患(心筋梗塞など、大きな血管の病気) を発症する頻度が2 倍以上に上がることが明らかになったからです。

国内では、1990年にスタートした山形県舟形町の疫学調査があります。40歳以上の糖尿病健診の受診者を、血糖値正常群、空腹時高血糖群、糖尿病群の3群に分けて10年間観察し、虚血性心疾患(心筋梗塞や狭心症) と脳梗塞における死亡の累積発生率を調べたところ、空腹時高血糖群は正常群と有意差(統計学上たしかに差があり、偶然起こったことではないといえる結果のこと) がありませんでした。

つまり空腹時血糖値は、糖尿病の可能性のある人を検出するために必要な検査ですが、必ずしも予後を反映してはいないようです。ところが、正常群と食後高血糖群、正常群と糖尿病群の間には有意差があり、7年後の累積生存率は食後高血糖群と糖尿病群との間に大差がなかったのです。

空腹時高血糖も食後高血糖も、日本の診断では「境界型糖尿病」とひとくくりにされます。しかしこの研究結果により、食後高血糖は心筋梗塞や脳梗塞を起こす危険度が高いことがわかりました。明らかな糖尿病ではないにもかかわらず、糖尿病と同じような速さで大きな血管の障害が進んでしまうのです。

ところが、日本の健診でわかる糖尿病の一般的な検査項目は、空腹時血糖値とHbAICの2項目です。ブドウ糖負荷試験を受けるか、食後1〜2時間をねらって検査をしないと、食後高血糖かどうかを判断するのはむずかしいのです。

ただし、ヘモグロビンA1Cで食後高血糖の有無を予測することはできます。食後高血糖はヘモグロビンA1C 5.2 %を超えると出現し始めます。最近、空腹時血糖値は正常範囲でも、ヘモグロビンA1Cが少し高い(5.2〜6.1%未満)という人が増えています。

少し前まで、ヘモグロビンA1Cが5.8 %くらいで医療機関を受診すると、「糖尿病予備軍の段階ですからまだ大丈夫。様子を見ましょう」と、ブドウ糖負荷試験をすることもなく帰されるケースが少なくありませんでした。しかし最近では、食後高血糖を積極的に検出し、早い段階から生活習慣の改善を促すような流れに変わっています。ほかにも糖尿病を診断する検査方法はありますが、まずは健診や人間ドックを受けて空腹時血糖値やヘモグロビンA1Cの値を確認すること。そして境界型糖尿病や食後高血糖が見つかった時点できちんと対応しなければ、取り返しのつかないことになつてしまいます。