大トロは巨大商社も絡む

  • 投稿日:
  • by
  • カテゴリ:

あと4~5年もすれば、日本からマグロ漁船がなくなると言われている。本マグロの漁獲量が激減したことと、資源保護の視点からクジラ同様、マグロ漁に厳しい規制が国際的に敷かれるのが確実だからだ。とくに、世界中のマグロの90%以上を消費している日本に対しては激しい非難さえ起こっている。

マグロ漁を取り巻く環境はこのようにきわめて厳しい。ところが、回転寿司にいくと、ぴっくりするくらい安い値段で大トロや中トロが食べられ、マグロ資源が減少しているなんてことはとても信じられない。マグロの可食部はせいぜい60%程度で、脂がいちばん多くのっているトロは少ない。マグロの中でも最高級のクロマグロは、キロ当たり3万円以上の高値で取引されることもある。大きいマグロでは200キロ近くになるから、5~600万円にもなるわけである。因みに、築地市場でこれまでの最高値は、01 年1 月の2020万円(202キロのクロマグロ)である。

ではなぜ、回転寿司のマグロのトロがそんなに安いのかというと、はとんど100% が、日本の商社がオーストラリア、地中海、メキシコ、クロアチア、スペイン、トルコの沿岸で畜養されたものだから。畜養というのは、マグロ(クロマグロかミナミマグロが主)の養殖のことで、海上の縦160 メートル、横60 メートル、深さ30メートルという広大ないけすに捕獲してきた若いいマグロを放し、約1ヶ月はどで出荷する。えさはイワシ、サバ、イカなどを粉末にした濃厚飼料である。

ミナミマグロで体長2 メートル、体重150キロを超え、クロマグロだと300キロを超えるまでになる。天然マグロではトロがとれる部分ははんのわずかだが、畜養マグロでは全身トロとまではいかないが、90% 近くがトロに近いものになる。しかし、いけすに入れた若いマグロの半分以上は出荷までに死んでしまうという。そのため、若いマグロを大量に捕獲する畜萎もマグロ資源の枯渇化に拍車をかけているとの非難が出てきている。

マグロの畜養が始まったのは90年代の初めで、世界中の畜養マグロの多くは、日本の商社が手掛けており、氷冷蔵されて空輸されている。回転寿司チェーンには直で納入されているので、市場相場の影響は受けない。もっとも市場価格も安く、畜養マグロは1キロ当たり天然ものの半分程度で1万円を超えることはない。畜養マグロのトロは、脂肪分が多く、刺身にして醤油につけると、醤油に大きめの脂がすぐに浮かんでくるから、素人でも分かる。

畜養マグロが回転寿司に使われていることが知られたのは、3年前のこと。名古屋の有名スーパーが開催した北海道物産展の回転寿司コーナーで、「津軽海峡1本釣り本マグロ」として、赤身のにぎり2カン300円、大トロ750円で販売された。ところが、食べたお客が、「天然のマグロと味が違う」と気付いたのがきっかけで、天然1本釣りマグロが、実は畜養マグロであることがバレてしまったのだった。しかし、スーパーでも回転寿司でも「畜養マグロ」と表示してあるところはまずない。原産地表示で、地中海、メキシコ、オーストラリアなどと表示されているくらい。

関連ページ