鯛で作る高級品もタラ、カスミザメの肉で代用されている「鯛味噌」

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鯛の肉でつくる魚味噌のことである老舗メーカーの製造パンフレットによると、鯛ででんぷ3.75kgに水を加えて熱し、裏ごしにかけた赤味噌および白味噌おのおの9.38kgずつ加えてとろ火で杓子でかきまぜながら焦げないように4~5時間練る。とある。

しかし、現在、このような手の込んだ高級品は庶民の口には滅多に入らない。「鍋味噌」といって食べているのは、タラ味噌、カスミザメ味噌、イシナギ味噌、ヒラメ味噌などと名称を変えなければいけないものである。タイでんぷも「鯛味噌」同様にタイからつくられることは極めてまれである。

タラ、イシモチ、キタイ、カナガシラ、カツオ、サバ、ブリ、サワラ、ヒラメ、エビ、ホタテガイなどの名称を、タイに替えてつけなければいけない。本当の「タイでんぷ」は、マダイの揉み肉でつくる。そぼろ3.75kgにみりん2.16L、砂糖3.75kg、醤油4.5L、水14.4Lを混合した調味液に加えてとろ火で焦げないように煮詰めたものである。

鯛味噌やタイでんぷは、珍味の類いになっているが、それだからこそ、本物を大切にしてもらいたいものだ。

鯛味噌同様、佃煮も昔の味を偲ぶこともできなくなった。佃煮の原料は数え切れないほど多い。ハゼ、イカナゴ、ワカサギ、カツオ、ウナギ、小アユ、刻みスルメ、アサリ、ハマグリ、フナ、コンプ、ノリなどが代表的。砂糖と醤油を適当に加減して煮熟すれば、誰でも簡単につくれるが、食品メーカーはコストを下げるために砂糖の替わりに人工甘味料を使用、原料が輸入品のため鮮度が落ちて色相が悪くなっているのを隠すために着色料でカバーしている。もちろん長期間商品価値が損なわれないように保存料の添加は不可欠である。かくして、日本の伝統食晶は大きく姿を変えていく。

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