赤ちゃんと水

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ほ乳類の生命は、母親の子宮の羊水の中で始まります。卵子と精子が受精して、子宮に着床したばかりの胎児は、じつにその97パーセントが水でできています。つまり人間は、ほとんど水に近い存在として、この世に生を受けるのです。
それは、人間という生物のルーツに関係しています。そもそも地球に生命が誕生したのは〝水″ という物質の持つ不思議な作用によってでした。今からおよそ38億年も昔のこと、海底のいたるところで噴き上がっていた熱水と、海水の有機物とが化学反応を起こし、地球で最初の生命体が生まれました。

その原始的な生物が、海の中で数十億年もかけて細胞分裂を繰り返した結果、やっと目に見える大きさの生物となり、やがて海から陸に上がって両生類、爬虫類、哺乳類、そして人間へと進化していったのです。受精したばかりの胎児がほとんど水に近い存在なのは、この太古の記憶の名残りと考えられています。

私たちは38億年前と同じように、水の中で原始的な生命体として生まれ、そして、お母さんの羊水の中で、生物の進化の過程をなぞるように成長していきます。やがて胎児の水分は少しずつ減少し、誕生の時を迎えます。生まれたての赤ちゃんは、それでも体重の80パーセント近くの肌がすべすべして、みずみずしいのはそのためです。

赤ちゃの水分が多いのは、成長するために新陳代謝を繰り返す過程で大量の水分を消費するから。子育ての経験をした人なら、赤ちゃんが小さい体でたくさんのくさんのミルクを飲むので驚いた記憶があることでしょう。
そのために必要な水分を補給するためです。しかしそのたっぷりの水分も、乳児から幼児、そして小学生中学生へと成長すると同時にどんどん失われていきます。そして成人になる時には、体重の65パーセント程度まで減ってしまいます。女性の場合は男性よりももっと水分が少なく、60パーセント程度にまで減少します。

それでも、人間の体重のじっに60パーセントが水でできているのです。体重の6割が水であるということは、あなたの体重が50kgとすると、体内に30 リットルもの水を抱えているということ。30リットルといったらミネラルウォーターのペットボトル20本分。それだけの水が、体の中に貯蔵されていることになるのです。

しかし、不思議なのは、それだけの水が体のどこに隠されているかということ。サウナでがんばって汗をかいたって減る体重はせいぜい1~2 キロ。いったい残りの水はどこにあるのでしょうか。じっは、体内の水の大部分は、細胞の中に貯えられているのです。

30リットルの水のうち2リットルほどは数十兆個もある細胞ひとつひとつの薄い膜の中に小分けにされ、封じ込められています。これを(細胞内液) と呼びます。
そして残りの約8リットルの水が、血液やリンパ液などの体液です。こちらは細胞の膜の外側にある水ですから(細胞外液) と呼ばれています。それでは逆に、60パーセントの水以外、残りの40パーセントは何かといえば、これはタンパク質や脂肪、ミネラルといった、体の組織のもとになる物質です。人間の体内では、こうしたさまざまな物質と水とが混ざり合って、筋肉や皮膚などを構成しています。

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