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膵臓の疲労を防ぎインスリンの働きを改善
ハナビラタケには、ビタミンやミネラル(無機栄養素)、アミノ酸(たんばく質の構成成分)、食物繊維の一種であるキトサンなど、さまざまな成分が含まれています。
中でベータも、とりわけ多いのが、β -グルカンという成分です。そもそも、グルカンとは、ブドウ糖がたくさんつながってできている物質(多糖類という) で、大きく分けてαとβ の2種類があります。
α-グルカンの代表的なものはデンプンやグリコーゲンで、多くの動植物に含まれます。一方、β -グルカンはキノコや酵母などに細胞壁の構造物質として含まれる成分です。
ハナビラタケの成分を分析した結果、全体の35% 以上をβ -グルカンが占めていることがわかっています。これは、同じくβ -グルカンが多いとされるキノコ、マイタケなどと比べて、なんと1.6~2.8倍という多さです。自然の食品の中で、β -グルカンをこれほど多く含むものは、ほかに見当たりません。ハナビラタケの場合、このβ -グルカンが、高い血糖値を下げるのに重要な役割を果たしているのではないでしょうか。
具体的には、β -グルカンは分子量(化学物質の重さや大きさを示す量)が大きいため、腸内で消化吸収されにくく、余分な糖をからめ取って体外に排出すると考えられています。余分な糖が血液中に多.ユりれば、高い血糖値を下げるためにすい臓は多量のインスリン(血糖値を下げるホルモン)を就新しなければならず、すい臓の疲労につながると考えられています。つまり、ハナビラタケをとれば、すい臓の疲労が防げるためインスリンの効きがよくなり、血糖値の上昇が抑えられるというわけです。
脳の幸せホルモンも増えた
ところで、前に述べたように、β-グルカンは、キノコ類全般に含まれている成分です。にもかかわらず、ハナビラタケほど血糖値を改善する作用の高いキノコは、今のところ見つかっていません。
つまり、ハナビラタケは、β-グルカンだけの働きで血糖値を下げているとは考えにくいところで、前に述べたように、β-グルカンは、キノコ類全般に含まれている成分です。にもかかわらず、ハナビラタケほど血糖値を改善する作用の高いキノコは、今のところ見つかっていません。つまり、ハナビラタケは、β-グルカンだけの働きで血糖値を下げているとは考えにくいともいえます。
その謎を解くカギは、私たちの脳にありました。実は、今回の試験では、ハナビラタケには脳内ホルモンの一種であるセロトニンの分泌を増やす働きがあるという、驚きの結果が出たのです。セロトニンは、ノルアドレナリンやドーパミンと並んで、体内で特に重要な役割を果たしている神経伝達物質の1つで、生体リズム・睡眠、体温調節に関与していることがわかっています。
セロトニンが分泌されると、交感神経(意志とは無問係に血管や内臓の働きを支配する自律神経のうち、活動時に働く神経) の働きが抑えられ、心身ともにリラックスします。セロトニンが「幸福のホルモン」と呼ばれる理由です。
血糖値を上昇させる原因の1つに、ストレスがあります。ストレスによって交感神経が優位になると、副腎(ホルモンを分泌する器官)からアドレナリンが分泌されます。アドレナリンは、血糖値を上昇させるホルモンです。ハナビラタケをとってセロトニンの分泌が増えれば、心身ともにリラックスしてストレスの解消に役立ちます。その結果、血糖値を上昇させるアドレナリンの分泌が減り、血糖値の上昇が抑えられるのではないでしょうか。
また、セロトニンによって神経の働きが正常化すると、全身の新陳代謝(古いものと、新しいものの入れ替わり) が促されて糖がどんどん使われるようになります。その結果、血糖値が下がることも十分に考えられるのです。さらに、セロトニンの分泌が増えれば、ストレスによる脳神経の興奮が鎮まり、良質な睡眠がとれるようになります。
睡眠の質が悪くて、あまり眠れない人は、糖尿病の危険度が高まります。ハナビラタケに含まれる成分のうち、どれがセロトニンの分泌を増やす働きにかかわっているのかは、現時点ではわかっていません。そして、セロトニン分泌の活発化で血糖値も下がるという事実も、さらに検証が必要でしょう。
しかし、いずれにしても、ハナビラタケをとって血糖値が下がることは、前の記事で桁介した試験でも明らかです。血糖値が下がらずに困っている人は、ぜひ、食事療法の一助としてハナビラタケを試してほしいと思います。ハナビラタケは、人工栽培された生のものを入手して、いろいろな料理に利用が可能です。最近では、ハナビラタケのエキスを抽出した栄養補助食品もいくつか市販されているので、そういったものを利用してもいいでしょう。