食のカラクリには、コピー商品のように、いかに本物に見せるかに関連することが多い。しかし、みりんの場合は少しばかり事情が違う。税金対策だ。正月の屠蘇、結婚式の三三九度の盃にも使われる屠蘇の本体がみりんであることを、日本人はすっかり忘れてしまった。
今、スーパーなどで売られているみりんで三三九度をする人は皆無だろう。しかしそれも当然のことで、今のみりんはみりんであってみりんではない。蒸し米と焼酎を原料とし、米麹で発酵させた本来のみりんは、アルコール分が13~20%含まれている酒類である。酒類なのだから、当然、酒税法の適用を受け酒税がかかる。実際の用途は酒ではなく調味料というのにおかしな話ではある。みりんメーカーが酒税を逃れるためには、アルコール含有を1%以下にするか、酒としては飲めないという酒税法でいうところの『不可欠措置』を当局にみとめさせなければあならない。
そこでみりんメーカーが開発したのが、加塩みりんである。塩を加えれば酒としては飲めないから、酒税法の適応は受けないというわけで、これが認められた。しかし、消費者にとってみれば、メーカーの都合でよけいな塩分を摂取することになったわけだ。
もうひとつが「みりんもどき」調味料の開発である。原料はブドウ糖、水あめ、糖液、生ブドウ酒、コハク酸、化学調味料、カラメルなどで、発酵させないので、1~2日間という短期間につくれる。これが「新みりん」として30数年前に売り出された。日本最初の合成調味料の登場といわれる。こうなると、本来のみりんとはまったく別物と言った方が良い。ともあれ、みりんは調味用に古くから使われている日本独特の酒だが、もはや風前の灯である。