カニを食べるときは本当に静かになる「。日本人ほどカニが好きな人種はいないのではないだろうか?その証拠にカニ食べ放題ツアーは予約ですぐにいっぱい。最近は居酒屋でもずいぶんと安いカニをメニューに載せているところもある。
ところで、カニの王者といえば、タラバガ二というのが相場だが、かなり高価でそう頻繁には食べられない。とくに、脱皮を5回以上を経た1.5kg以上のものが最高級とされる。が、そんな5歳以上のタラバガ二は、浜値で1kg5000円はする。
ではどうして、「カニ食べ放題」は、あんなに安いのか。それは、タラパガ二の代用品として、アブラガ二を使っているからだ。2005年には北海道のいくつかの小売店や大手デパートが、アブラガ二をタラバガ二と偽装表示して販売、行政処分を受けたが、水産加工業者はカニ食べ放題ツアーも同じと指摘する。
「そもそもタラパガ二の資源量は多くありませんからね。その代用に近縁種のアブラガ二が使われていました。甲羅の中央部にあるツボ型のふくらみの上にあるとげの数が違います。タラバは6本、アブラは4本です。
日本人はカニが大好物なのにカニについては非常に無知です。
当然、ズワイガニにも安いものが出回っています。あれは雄ではなくめす。
ズワイガ二といえば、山陰の冬の味覚の代表格。山陰地方では「松葉ガ二」、福井では「越前ガニ」と呼ばれているが、料亭などで出されている1パイ1万円も2万円もするのはオスだけである。大型で良質のものは1パイ10万円で取引されることもあるように、庶民にとっては、まさに高嶺の花。
ところが、このズワイガニが首都圏のスーパⅠ で1パイ800円前後で売られることがある。「びっくりするほど安い」と、飛び付くと、とんでもないことになる。ズワイガ二を食べたことのある人ならば、「ずいぶんと味が落ちたものだ」と思うし、初めて食べた人は、「もういいや」と思ってしまうだろう。実はこの手のズワイガ二はすべてメスなのだ。オスでもメスでもズワイガ二はズワイガ二だから、偽装表示にはあたらない。オスに比べメスは味が格段と落ちる。居酒屋で1000円以下で出されるズワイガニはまずいメスであると思った方がいい。タラバガ二、ズワイガ二とくれば毛ガニも外せない。毛ガニの旬は冬と思っている人が多いが、
カニ味噌の旨さでは毛ガ二がいちばんというのが世間の評価だが、他のカニに比べると、身の食べづらさが毛ガ二の難点。
毛ガ二の水揚げは北海道が圧倒的に多いが、この毛ガ二にも「クリガ二」という代用品が存在する。毛ガ二よりやや小ぶりで多少黒ずんでいるが、茄でてしまえば、都会の消費者ではなかなか見分けをつけるのは難しい。
深海に生息する毛ガ二と違って、沿芹の岩礁帯に棲んでおり、それを手掴みで掴むのが「クリガ二」の漁法である。「このクリガ二が毛ガ二として堂々と販売されていたが、魚介類の表示が厳しくなってからは公然とは販売されていません。でも、クリガ二が市場で取引されているのは事実です。にもかかわらず、スーパーでもクリガ二は出てません。どうも都会の居酒屋で毛ガ二として安く出されているようです」(水産加工業者)安い「偽カニ」が出回るのは、タラパガ二もズワイガニも毛ガ二も乱獲で資源の枯渇化が進んでいるからだ。飽食日本の表象でもある。