健康な肌は、洗いすぎないことが大切
日本人はいつからか、細菌があるというと大騒ぎをして除菌・殺菌に熱心になり、なんとなく不潔っぼい気がする、菌が繁殖してしまうかもしれない、と思えばすぐにしゅっと除菌スプレーを使います。
普通に使っていればたいして菌などつかないだろうと思われる商品にまで抗菌効果が宣伝されています。こうして日本人はかえって雑菌に弱い体質になり、海外旅行にいくと水を飲んで下痢をしたり、体調を崩したり、病気になったりする人が多いのです。
普段から清潔すぎる環境というのもよくないと言われています。マウスの実験で言えば、一度も細菌にさらされることなく無菌飼育されたマウスは、免疫系がきわめて弱いのです。雑菌の多い室外に出せば、またたく間に菌に感染して死んでしまいます。
これは、人間も同じで、ある程度雑菌のいる環境にいたほうが、免疫系が鍛えられるのです。海外の衛生環境の悪い地域では、病気にかかる率が高い一方、アトピー性皮膚炎や花粉症などアレルギー症状が見られないこともよく指摘されます。
肌の脂は、大事な防御壁
日本人はだいたいお風呂好きです。旅行と言えば、いつの時代も、どんな人にも温泉地が大人気でしょう。後で述べますが、体を温めることは万病にいいのですから、湯船に浸かってゆったりリラックスすることは心身に大きな効果が期待できます。
ただし、体にいいのはここまでです。気持ちのいいお風呂をさらに快適にしようと、さまざまな石鹸やらボディウォッシュやらナイロンタオルなどが売られています。ところが、これらを使って毎日体を念入りに洗えば、汚れだけではなく病気をはねのける皮膚の力までそぎ落とすことになります。
そもそも毎日ゴシゴシこするほど、現代の生活は体が汚れることなどないでしょう。もともと日本人の体の表皮は、非常に薄くて弱い。人種的に、黒人や白人は表皮が厚くて水分の含有量が多いのに比べて、東洋人、特に日本人の肌は薄くて水分の含有量が少ないのです。
体の皮膚表面には皮脂があり、アレルギーの元になるダニやカビが皮膚から侵入しょぅとするのを弾き飛ばします。たとえば、日本人にアトピー性皮膚炎が多いのは、石鹸でこの皮脂を洗い流してしまうことに一因があると考えられます。
アトピー性皮膚炎は、肌の厚い黒人や白人にはあまり見られません。しかし、日本人と皮膚の似ているモンゴル人も、田舎のパオ(移動式住居)で暮らしているような人々には少ないのです。この地で暮らす人には、お風呂に入る習慣がないからです。
子どもにアトピー性皮膚炎が増えているのも、赤ちゃんのときから体を石鹸でゴシゴシ洗われたのが原因とも言えるでしょう。
真面目で几帳面で育児熱心なお母さんほど、赤ちゃんがちょっと汚れても湿疹が出ても、あわてて石鹸をつけて洗い流します。
赤ちゃん用石鹸の消費量とアトピーの患者数は比例していて、この消費量が世界でもっとも多い日本にアトピーは一番多いのです。今は韓国などでも石鹸の使用量が、アトピーともに増えつつあります。皮肉なことに、育児にズボラな母親より、愛情と時間をたっぷり注いでいる母親のほうが、子どもをアトピーにしてしまう可能性があるのです。
大人も同様で、石鹸で肌をゴシゴシこすることは、弱い皮膚から皮脂をはがし、さらにその皮膚を傷つけるようなものです。韓国式アカスリが人気ですが、これも気をつけなければなりません。あか肌の表皮が垢になってはがれ落ちれば、新しい皮膚がどんどんできますが、しよつちゅうアカスリをしていれば、新しい皮膚は弱いうちに外気にさらされるのでひび割れてきます。
するとかゆくなって、かけば皮膚を傷つけてまたかゆみが出てくる、という悪循環に陥ってしまいます。老人性の皮膚のかゆみも、かけばかくほど皮膚が傷ついて、さらにかゆくなります。風呂に入っても石鹸でゴシゴシ体を洗わないこと。脂ぎつた年齢ならまだしも、年齢とともに壕脂は減っていきますから、乾燥肌が気になる中高年は、特に気をつけたいものです。
また、アレルギー症状を引き起こすものと言えば、ダニやカビが大きな原因です。しかしながら、日本人の暮らしは、かえってダニやカビの温床になっているケースが多くあります。
たとえば新築のマンション。雨戸のないマンションでもサッシがしっかりしているので断熱性は抜群。一部屋ある畳の部屋は、洋風の生活に合わせてふかふかのカーペットを敷いている。もちろん各部屋に冷暖房付き。こういう部屋は、風の流動が少なく、常にある程度の湿度と温度があります。
実はこういう部屋こそ、一番ダニやカビを繁殖させやすいのです。暖房をすれば乾燥しがですが、畳の上に絨毯を敷いた場合、その間に湿気が保たれますから、ダニとカビにとっては非常に居心地のいい湿度と温度になるわけです。
こうした環境に住んでいると、アトピー性皮膚炎などアレルギーを発症しやすくなります。外のホコリを入れまいと、窓を閉め切っていればなおさらです。断熱性の高い家であれば、絨毯などは敷かずにフローリングにしておくのが一番です。